◎ハイチの治安は昨年7月のモイーズ大統領暗殺事件と8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、暴力が蔓延している。
ハイチ、首都ポルトープランスの暴動(Getty Images/AFP通信)

ハイチの首都ポルトープランスで暴動と略奪が続いている。

数日前に発生した燃料価格の大幅値上げに抗議するデモはアンリ(Ariel Henry)首相の辞任を要求している。デモ隊はタイヤに火を放ち、政府機関や民間企業を襲撃した。

法務省は17日、略奪や破壊に関与した者をひとり残らず逮捕すると発表した。

ハイチの治安は昨年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺事件と8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、暴力が蔓延している。

ポルトープランスでは3カ月ほど前から「G9&Family」と「G-Pep」と呼ばれる2つのギャングが地域の支配権をめぐって激しい戦闘を繰り広げており、国連によると、7月中旬以降の死者、負傷者、行方不明者は確認できているだけで500人を超え、数千人が国内避難民になった。

この数カ月でハイチの市民数万人が国外に逃亡したと推定されている。その多くが難民となり、メキシコ経由で米国を目指しているものとみられる。

経済状況も悪化の一途をたどっており、米国から輸入される日用品の価格はこの数カ月で4倍以上に値上がりし、ガソリンの入手も困難になった。

国連のグテレス(Antonio Guterres)事務総長は17日、この暴動に深刻な懸念を表明した。

デモ隊は燃料補助金の廃止によるガソリンやディーゼルの値上げと、ギャングの暴力に対処できないアンリ政権に解散を要求している。

AP通信によると、デモ隊は警察に石や火炎瓶を投げつけ、警察は催涙ガス弾でこれに応戦したという。実弾が使用されたという報告もある。

ポルトープランス郊外のスラム街では今週、ギャング間抗争を取材していたとみられるジャーナリスト2人が殺害された。

AP通信は治安筋の話を引用し、「北部ゴナイブでは公共施設だけでなく民家も襲撃の対象となり、略奪が横行している」と報じた。

国連世界食糧計画(WFP)の現地事務所も15日に襲撃された。

AP通信によると、ギャング間抗争は収まる気配を見せず、7月のわずか10日間で200人以上が殺害され、一部の犠牲者はバラバラに切り刻まれたり、焼き殺されたりしたという。

地元の住民は「暴力が国を支配し、水や食料の供給を妨げている」と訴えている。

国連報道官はグテレス氏の声明を引用し、「ハイチは行き詰まっている」と警告した。「現在の状況が続けば、人口の大多数を占める貧困層の生活はさらに悪化し、目をそむけたくなるような人道的危機が発生するでしょう」

ハイチ、首都ポルトープランスの暴動(Getty Images)
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