◎政府は3月25日から26日の間に殺人事件が70件以上発生したことを受け、非常事態を宣言した。
2019年3月12日/メキシコ、首都メキシコシティの政府庁舎、エルサルバドルのブケレ大統領(Getty Images/AFP通信)

エルサルバドルのブケレ大統領は5日、服役中のギャングへの食事提供を停止すると示唆した。

ブケレ大統領は5日に行われた警察学校の卒業式で、「ギャングが犯罪の波を解き放つのであれば、刑務所の食料を断つ」と述べた。

またブケレ大統領は一部のギャングが政府や民間人への報復を示唆していることについて、「ギャングが無作為に復讐を始めるという噂が流れているが、そんなことをすれば、刑務所に収監されたギャングは何も食べられなくなる」と述べ、ギャングをけん制した。「どれだけもつか見てみよう」

エルサルバドルでは先月末頃からギャング関連の殺人事件が多発したため、政府は非常事態を宣言し、刑法を改正した。これにより、ギャングに所属し逮捕された幹部の懲役刑は6年以上9年以下から「40年以上45年以下」、その他の構成員は3年以上5年以下から「20年以上30年以下」に引き上げられた。

またブケレ大統領は刑務所に収容されたギャングの食事を1日2食に減らすよう命じ、受刑者のマットレスを押収し、受刑者が廊下や階段をカエルのようにはいつくばりながら行進する動画を投稿した。

地元メディアによると、非常事態宣言の発令以降に検挙されたギャングは6,000人近くに達したという。

ブケレ大統領は2万人の受刑者を収容できる最高警備の刑務所を建設するよう命じている。

国内外の人権団体は政府の取り締まり強化と刑務所内の暴力に懸念を表明している。同国の人権検察庁は5日、恣意的な33件の逮捕を含む67件の人権侵害の訴えを受理したと明らかにした。

国連の人権担当者も深刻な懸念を表明したが、ブケレ大統領はいつものように批判を一蹴した。「国際機関が何を言おうと関係ありません。いいですか、私はエルサルバドルの子供、女性、老人、ギャングを除くすべての民間人を守ります。ギャングが復讐を望むのであれば、私は彼らを(天国に)連れて行ってもいい。私たちは彼らに(死を)与えます」

議会もブケレ大統領の方針を支持しているようである。この国の悪名高いマラ・サルバトルチャ(MS-13)は首都サンサルバドル近郊を含む多くの地域で活動している。

MS-13は主に中米と米国で活動するギャングで、エルサルバドル内戦から逃れた難民などが1970~1980年代に結成したと考えられている。生業は殺人、恐喝、麻薬密売。構成員数は7万人以上と推定されている。

非常事態宣言により、結社の自由や弁護人を選任する権利などが制限されている。また政府は、逮捕状なしで拘束した個人の拘束時間を72時間から最大15日に延長し、裁判所の許可を待たずに通信を傍受することなども認めた。

警察と兵士はギャングの拠点地域を封鎖し、民家を一軒一軒捜索し、地域への出入りを制限している。

ブケレ大統領は先週、警棒を持った看守が受刑者を小突き回したり蹴っ飛ばしたりする動画を共有し、国内の保護者にギャングは「刑務所か死」に直面するため、子供をギャングに近づけないよう警告した。

ブケレ大統領の支持率は90%近くを維持しており、多くの市民がギャングの取り締まり強化を歓迎しているように見える。

2022年3月30日/エルサルバドル、首都サンサルバドルの刑務所(Getty Images/AFP通信/PAメディア)
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