◎エルサルバドルには中米最大のギャング「マラ・サルバトルチャ(通称MS-13)」の拠点がある。
2022年8月16日/エルサルバドル、首都サンサルバドル郊外のソヤパンゴ、ギャングの構成員とみられる男たち(Salvador Melendez/AP通信)

エルサルバドル議会は16日、ブケレ(Nayib Bukele)大統領の対ギャング非常事態令の1カ月延長を賛成多数で可決した。

地元メディアによると、採決は15日遅くに行われ、12回目の1カ月延長が決まったという。

ブケレ氏は昨年3月、ギャング関連の殺人事件が多発したことを受け、非常事態を宣言。刑法を改正するなどしてギャングの取り締まりを強化した。

それ以降に逮捕されたギャングまたはギャングと疑われる市民は6万5000人を超え、そのうち6万人近くが裁判を受けることなく刑務所に勾留されている。

非常事態令により、警察の権限は大幅に強化され、結社の自由や弁護人を選任する権利なども制限。警察は令状なしで家宅捜索を行ったり被疑者を拘束できるようになった。

また刑法改正により、ギャングに所属し逮捕された幹部の懲役刑は6年以上9年以下から「40年以上45年以下」、その他の構成員は3年以上5年以下から「20年以上30年以下」に引き上げられた。

最新の世論調査によると、回答者のおよそ9割が人権団体から非難を集めている政府の「ギャング討伐作戦」を支持しているという。

一方、当局は15日、有罪判決を受けたとされるギャング約2000人を今年初めに完成した巨大刑務所に収監した。法相はSNSに声明を投稿。「彼らはここで数十年生活することになる」と述べた。

政府がSNSで共有した動画には、上半身裸の白い短パンをはいた裸足の囚人たちが手錠をかけられ、コンクリートの床を走らされているところが映っていた。

そして囚人たちは独房に押し込まれ、足を固定され、体育座りするよう強制された。

ブケレ氏の報道官は15日の記者会見で、約6万人が裁判を待っている状態にもかかわらず、「逮捕された者たちは町に決して戻らない」と語った。

地元の人権団体によると、取り締まりに巻き込まれて逮捕され、その後解放された一般市民は約3500人に過ぎないという。

人権団体はギャングが支配する地域に住んでいたという理由で大勢の市民が逮捕され、まだ勾留されていると主張している。

エルサルバドルには中米最大のギャング「マラ・サルバトルチャ(通称MS-13)」の拠点がある。このギャングの構成員は7万人と推定され、長い間、同国の広い範囲を支配し、殺人や強盗を繰り返してきた。

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