◎マリの軍事政権はロシアとの緊密な関係を維持している。
フランス軍が公開した写真、マリ北部で民間人の遺体を埋めるロシアの民兵(French Army/AP通信)

フランス軍は22日、ロシアの傭兵がマリ北部の陸軍基地付近で民間人の遺体を埋葬しているとされる映像を公開した。

仏軍は今週、北部のゴシ基地をマリ軍に引き渡した。

映像には白人兵士と思われる10人が少なくとも10人の遺体を砂で覆っている様子が映っている。仏軍の報道官によると、傭兵は民間軍事会社「ワグネル」のメンバーだと思われるという。

しかし、ロシアを支持するツイッターアカウントやワグネルが運用するとされるアカウントは仏軍を非難している。

ワグネルとつながりのあるアカウントは遺体の写真とコメントを投稿している。「これは仏軍がゴシ基地に残していったものです。彼らは民間人を処刑しました。暴挙を見過ごすわけにはいきません」

仏軍は19日にゴシ基地の管理権をマリ軍に移したが、安全・透明性・秩序を守ったと報告している。

AP通信によると、仏軍は19日にワグネルに属すると思われる傭兵がゴシ基地に入り、機材を下ろすところを確認したという。

マリの軍事政権の報道官は22日、事件を調査するチームをゴシ基地に派遣したと発表した。

仏軍によると、マリ北部で活動する仏軍の信用を落とそうとする動きは数ヶ月前から確認されていたという。マリ政府はロシアとの緊密な関係を維持している。

米シンシナティ大学の政治学助教授であるサーストン氏はSNSに、「ワグネルとマリ軍は人命を軽視しているように見える」と投稿し、懸念を表明した。

またサーストン助教授は、「マリの反フランス感情はワグネルの偽情報が流れる前から高まっていた」と指摘した。「ワグネルとマリ軍は反フランス感情をうまく利用し、仏軍を追い出しました...」

フランス主導のアフリカ連合軍は2012年からマリ北部のサヘル地域で活動するアルカイダやイスラム国(ISIS)関連のジハード組織と戦っている。犠牲者は民間人込みで数千人、約150万人が避難民になったと推定されている。

フランスは2013年に軍事介入し、マリ北部からジハード組織を追い出す作戦を主導した。しかし、ジハード組織は作戦終了以降もマリ軍と国連平和維持軍に数多くの攻撃をしかけ、その勢いはマリ中心部に広がり、反フランス抗議デモに発展した。

フランスは今年2月、軍事政権がワグネルの傭兵を雇ったことなどを受け、マリから部隊を撤退させると発表した。軍事アナリストによると、マリ国内では約1000人のロシア人傭兵が活動しているという。

人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチは今月、ロシアの傭兵と思われる外国人兵士がマリ中部のモウラで推定300人(一部はイスラム過激派の戦闘員と思われるが、ほとんど民間人)を殺害したと告発した。

22日に公開された映像の遺体がどこから運ばれてきたは不明である。仏軍は数日前に戦闘があったとされる地域(ゴシから約90km)から運ばれた可能性があると説明したが、証拠はないとのこと。

今回の事件はフランスの評判を落とそうとするロシアの情報操作のひとつとみられ、ロシアの傭兵が危険であることを認識しているマリ軍にも悪い印象を与えた。

サーストン助教授は仏軍が公開した空撮映像について、「ロシアの偽旗作戦をほぼ阻止している」と称賛した。「ロシアはマリ国内におけるフランスの評判を落とそうと必死に立ち回っているが、映像を見る限り、ロシアの偽旗作戦は機能していない」

2022年1月14日/マリ、首都バマコ、フランスの制裁に抗議するデモ(Getty Images/AFP通信)
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