◎ティグライ地域のコミュニティで生活していた目撃者はAP通信の取材に対し、「エリトリア兵は市民を見境なく襲い、女性をレイプし、抵抗の有無に関わらず人々を虐殺した」と述べた。
◎エリトリアは世界で最も情報統制された国のひとつであり、30年近くエチオピアを支配したティグレ人民解放戦線(TPLF)と激しく対立していた。
2020年11月30日 AP通信/エチオピア、ティグライ地域、紛争に巻き込まれ負傷した女性

2月19日、エリトリア政府は、エチオピアのティグライ地域でエリトリア軍が市民数百人を虐殺したと報じたAP通信のレポートを却下した。

エリトリア情報相のスポークスマンは声明で、エチオピアの聖地アクスムでエリトリア軍が大量虐殺に関わったという報道はとんでもない嘘と述べた。

スポークスマンによると、エチオピア政府はエリトリア軍が一連の紛争に関わっていないことを認識しているという。

昨年11月にティグライ地域で発生したエリオピア政府軍とティグレ人民解放戦線(TPLF)の戦闘は、インターネットが遮断された影響で戦地の情報はほとんど明らかにならず、エリトリア政府はTPLFの掃討作戦に関与したという報道を繰り返し否定している。

AP通信はエリトリアの情報相に現地の写真などを提供し事実確認を求めているが、回答は得られていない。

伝えられるところによると、ティグライ地域に侵攻したエリトリア兵士は数千人にのぼったという。

ティグライ地域のコミュニティで生活していた目撃者はAP通信の取材に対し、「エリトリア兵は市民を見境なく襲い、女性をレイプし、抵抗の有無に関わらず人々を虐殺した」と述べた。

別の目撃者はエリトリア兵がトラックに略奪品を積み込む様子を見たと述べた。

AP通信はレポートの中で、「エリトリア兵はアクスムの街路や教会で民間人を殺害し、犠牲者を埋葬しようとした市民にまで攻撃を仕掛け、埋葬を阻止した」と書いている。

ある教会関係者は11月下旬の週末に市民約800人が殺され、アクスムでは数千人が虐殺されたと信じていると述べた。

エリトリアは世界で最も情報統制された国のひとつであり、30年近くエチオピアを支配したTPLFと激しく対立していた

両国の紛争を治めたアビィ・アハメド首相は2019年にノーベル平和賞を受賞した。

昨年11月から約1カ月間続いたティグライ紛争の死者数は明らかにされておらず、エチオピア政府は第三者の調査を拒否している。

エチオピアの赤十字は今月、ティグライの人口(推定600万人)の80%に人道支援を提供できておらず、事態が改善しなければ1か月後には数千人が餓死する可能性があると警告した。

エチオピア、ティグライ地域

ティグライについて知っておくべきこと

・2021年2月1日、ティグレ人民解放戦線(TPLF)の元リーダー、デブレツィオン・ゲブレミチャエル氏は声明で、「政府軍はティグライの市民を虐殺した」と述べた。

・2021年1月、ティグライ緊急調整センター(ECC)、ティグライ地域で「数十万人が餓死する可能性がある」と警告。

・2020年12月23日、ベニシャングル・グムズ地域(民族境界線沿い)で虐殺事件が発生し、100人以上が死亡。

・2020年12月、エチオピア国防軍は、ティグレ人民解放戦線(TPLF)の指導者の所在に関する情報に約25万ドル(2,600万円)の懸賞金をかける。

・2020年12月11日、エチオピア政府、北部ティグライ地域の難民キャンプから逃れた「エリトリア難民数千人」を元の難民キャンプに戻すと発表。

・2020年12月8日、エチオピア政府、ティグライ地域の検問所を突破しようとした国連職員に発砲

・2020年12月、国連とエチオピア、ティグライ地域への援助を許可する協定に署名

・2020年12月1日、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、難民の栄養失調と飢餓を警告。

・2020年11月29日、赤十字病院、医療用物資が「危険なほど不足」していると警告。

・2020年11月28日、アビィ・アハメド首相、州都メケレを「完全に支配した」と宣言。

・2020年11月25日、政府軍、州都メケレへの攻撃を開始

・2020年11月22日、国連、エチオピア政府軍によるティグライ地域への「最後通告」について、市民を巻き込む致命的な戦争犯罪につながると懸念を表明。

・2020年11月22日、アビィ・アハメド首相がティグレ人民解放戦線(TPLF)に降伏する機会を与える。

・2020年11月、国連のアントニオ・グテーレス事務総長、「即時の一時停戦」を求める。

・2020年11月、国連、「本格的な人道的危機」が発生していると警告。

・2020年11月14日、TPLFが、近隣地域の空港などをロケット弾で攻撃

・2020年11月13日、国連はマイカドラの町で発生したと伝えられている大量殺戮について、事実であれば「戦争犯罪」の可能性もあると述べた。

・2020年11月、ティグライ地域、南西エリアに位置するマイカドラの町で、数百人が刺されるなどして死亡した。

・2020年11月4日、TPLFが政府軍の軍事キャンプを攻撃。TPLFは関与を否定している。

・2020年9月、アハメド政権はコロナウイルスへの対応として国内での選挙活動を禁じ、TPLFはこれに猛反発した。TPLFはこの制限を、「中央政権の独裁体制を強化する違法行為」と見なしている。

・国内最大の民族グループはオロモ民族。TPLFはこれに属する。

・オロモ民族グループとソマリア民族グループの衝突が長年続いてる。

・1970年代~1980年代、政府の崩壊、干ばつ、飢饉で100万人以上が死亡、約800万人が影響を受けたと伝えられている。指導者はマルクス主義の独裁者、メンギスツ・ハイレ・マリアム。

・1989年、TPLFは他の反政府組織と合併、エチオピア人民革命民主戦線(EPRDF)を結成。

・1991年、EPRDFの軍事攻勢により、メンギスツ・ハイレ・マリアム政権崩壊

・1991年7月、EPRDF、オロモ解放戦線(OLF)などが87名の国民議会を形成。エチオピア暫定政府(TGE)を設立。

・2018年4月2日、アビィ・アハメドが首相に就任。

・2018年7月、エチオピアとエリトリア国の首脳が20年ぶりに会談、和平協定に署名

・2018年10月25日、サーレ・ワーク・ゼウデが大統領に就任。エチオピア初の女性大統領。

・2018年の避難民数は推定140万人。

・2019年、アハメド首相がノーベル平和賞を受賞。

・政府とTPLFの緊張関係は年々悪化している。

・TPLFはエリトリア国との和平を認めていない。

オロモ民族グループによる虐殺(数十人規模)が横行。オロモに属するアハメド首相はこれを非難している。

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