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イラン戦争長期化で東南アジアの観光産業に打撃、旅行需要激減

タイやベトナム、カンボジアなどの東南アジア諸国では夏の観光シーズンを前に航空券価格が上昇している。
カンボジア、世界遺産アンコール・ワット(Getty Images)

中東情勢の緊迫化が東南アジアの観光産業に深刻な影響を及ぼしている。米イラン戦争の長期化によって原油価格が高騰し、航空燃料費の上昇や航空路線の混乱が発生しており、観光収入に依存するアジア各国では旅行需要の減退への懸念が強まっている。

タイやベトナム、カンボジアなどの東南アジア諸国では夏の観光シーズンを前に航空券価格が上昇している。航空会社は燃料費の増加分を運賃に転嫁せざるを得ず、一部では減便や路線の見直しも進んでいる。中東地域の空域を避けるため飛行ルートが変更され、飛行時間の延長や運航コストの増加も発生している。

観光業はこれらの国々の経済を支える重要な産業である。タイでは国内総生産(GDP)の1割以上を観光関連産業が占め、ベトナムでも観光収入は雇用や外貨獲得の大きな柱となっている。しかし、コロナ禍からの回復途上にある中で新たな打撃を受ける形となり、業界関係者の間では危機感が広がっている。

旅行費用の上昇は観光客の行動にも影響を与えている。航空券だけでなく、ガソリン価格や物流コストの上昇によって宿泊費や飲食費も値上がりし、家計負担が増した消費者は旅行計画の見直しを迫られている。特に欧米やアジアの中間所得層では、海外旅行を控える動きが目立ち始めている。

ベトナムで宿泊施設を運営する事業者は、経済状況が悪化すると旅行は真っ先に削減される支出だと指摘する。高級旅行者はより安価な宿泊施設へ移行し、中価格帯の利用者は格安ホテルを選ぶ傾向が強まるため、低価格帯の事業者ほど厳しい状況に置かれるという。

また、観光客の減少は地域経済全体にも波及している。カンボジアではトゥクトゥク運転手や土産物店、飲食店など観光客向けサービス業の収入が落ち込み始め、燃料価格の高騰も重なって生活への圧力が強まっている。観光地では以前のような人出が見られなくなったとの声も上がる。

アジア開発銀行(ADB)や民間調査機関はイラン戦争によるエネルギー価格の上昇がアジア太平洋地域の経済成長率を押し下げる可能性があると警告してきた。生産コストや物価の上昇に加え、観光需要の減少が地域経済の重荷になるとの見方だ。

中東での紛争は地理的には遠く離れているが、エネルギー供給網や航空ネットワークを通じて東南アジア経済に直接的な影響を与えている。各国は観光業の回復を成長戦略の柱に据えてきたものの、国際情勢の不安定化によってその前提が揺らいでいる。戦争の終結が見通せない中、観光依存度の高いアジア諸国は新たな試練に直面している。

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