SHARE:

チェコ裁判所、独ネオナチ活動家の身柄引き渡し認める

この事件は単なる引き渡し問題にとどまらず、ドイツで近年導入された性別変更制度を巡る論争とも結び付いている。
チェコ、首都プラハ(shutterstock)

チェコ西部プルゼニの裁判所は6月1日、ドイツのネオナチ活動家マルラ・スヴェンヤ・リービッヒ(Marla-Svenja Liebich)被告のドイツへの身柄引き渡しを認める判断を示した。被告はヘイトスピーチや名誉毀損、不法侵入など複数の罪で実刑判決を受けており、今回の決定によって服役のためドイツへ送還される可能性が高まった。ただし、被告には上級審へ異議申し立てを行う権利が残されている。

この事件は単なる引き渡し問題にとどまらず、ドイツで近年導入された性別変更制度を巡る論争とも結び付いている。被告はネオナチ系活動家として知られ、かつては男性名義で政治活動を行っていた。しかし2024年11月に施行された「自己決定法」に基づき、法的性別を男性から女性へ変更した。

ドイツの自己決定法は成年者が医師の診断や裁判所の許可なしに法的性別を変更できる制度で、性的少数者の権利拡大を目的として導入された。一方で保守派や右派勢力からは制度の悪用を懸念する声も上がっている。被告のケースはその象徴的事例として国内で大きな議論を呼んできた。

実刑判決が確定した後、被告は女性として登録されたことを理由に、ドイツ東部の女子刑務所へ収監される予定だった。しかし2025年8月、出頭命令に応じず所在不明となった。その後、ドイツ国境に近いチェコ国内で逮捕され、引き渡し手続きが進められていた。

5月に開かれた審理で、被告はドイツへ送還された場合、男性刑務所に収監される可能性があるとして反対を表明した。弁護側は安全面への懸念を訴えたが、裁判所は引き渡しを認める判断を下した。

この問題を巡っては、ドイツのドブリント(Alexander Dobrindt)内相も「制度悪用の例になり得る」と発言し、性別変更制度の運用を巡る政治的論争へ発展している。性的少数者の権利保護と制度の適正利用をどのように両立させるかが問われる中、今回の事件はドイツ社会におけるジェンダー政策の課題を浮き彫りにした。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします