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韓国サムスン電子、5月18日に労使交渉再開、スト回避目指す

今回の対立の中心にあるのは、賞与制度を巡る不満だ。
韓国、首都ソウル、電機大手サムスン電子の組合員による抗議デモ(ロイター通信)
韓国の電機大手サムスン電子と労働組合が労使交渉を18日に再開する。交渉は政府の仲介によって行われる予定で、決裂寸前だった労使対立の打開につながるかが注目されている。組合側は大規模ストライキ計画を掲げており、交渉が不調に終われば、世界的な半導体供給網にも影響が及ぶ可能性がある。

今回の対立の中心にあるのは、賞与制度を巡る不満だ。労組はライバルのSKハイニックスと比べて業績連動ボーナスが著しく低いと主張している。労組は現在、「基本給の50%まで」とされている賞与上限の撤廃や、営業利益の15%を賞与原資として配分する制度改革を要求している。これに対し会社側は、一時金支給には応じる姿勢を示したものの、恒久的な制度変更には慎重な立場を崩していない。

労組は要求が受け入れられなければ、5月21日から18日間のストライキを実施すると警告している。参加者は最大5万人規模に達する可能性があり、AI向け半導体やメモリー製品の生産に支障が出るとの懸念が強まっている。サムスン電子は世界最大のメモリーチップメーカーであり、米エヌビディアやグーグルなど世界的IT企業にも部品を供給している。そのため市場では、ストが長期化すれば半導体の価格上昇や納期遅延を招きかねないとの見方が広がっている。

韓国政府も危機感を強めている。キム・ミンソク(金民錫)首相は16日、関係閣僚会議を開き、「国家経済への影響は極めて重大だ」と述べ、労使双方に対話継続を求めた。韓国経済は近年、半導体輸出への依存を急速に強めており、4月には輸出全体の37%を半導体が占めた。政府内では、最悪の場合には緊急仲裁命令の発動も取り沙汰されている。これは政府が「経済や公共生活への重大な影響」を理由にストを一時禁止できる制度だが、発動例は極めて少ない。

今回の対立は、サムスンの企業文化の変化も映し出している。サムスンは長年、「無労組経営」を続けてきたが、近年労組加入者が急増した。背景には、AI向け半導体市場でSKハイニックスが先行したことへの社員の不満がある。SKハイニックスは昨年、労組要求を受け入れて賞与制度改革を実施し、その結果がサムスン社員の不公平感を強めた。現在、サムスン電子の組員数は9万人を超え、韓国内従業員の7割以上を占めるまでになった。

こうした中、サムスン電子のイ・ジェヨン(李在鎔)会長は16日、異例の謝罪声明を発表。「顧客や国民に心配をかけたことを申し訳なく思う」と述べ、対話による解決に努力する姿勢を示した。会社側は交渉責任者を交代させるなど、事態収拾を急いでいる。

サムスン電子は現在、AI向け高帯域幅メモリー(HBM)市場で巻き返しを図っている最中だ。もしストによって生産体制が混乱すれば、競争相手であるSKハイニックスや米マイクロンにシェアを奪われる可能性もある。今回の賃金交渉は単なる労使対立にとどまらず、韓国経済と世界半導体市場全体を左右する重要局面となっている。

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