SHARE:

フィリピン司法長官、デラローサ上院議員の逮捕命じる

デラローサ氏は2016~18年まで国家警察長官を務め、ドゥテルテ政権の看板政策だった麻薬撲滅作戦を主導した人物として知られる。
2026年5月13日/フィリピン、首都マニラ、デラローサ上院議員(ロイター通信)

フィリピン政府は21日、国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ているデラローサ(Ronald dela Rosa)上院議員の拘束に向けた対応を本格化させた。デラローサ氏はドゥテルテ前政権下で行われた「麻薬戦争」に関与し、殺人を含む「人道に対する罪」の疑いをかけられている。司法省のビダ(Fredderick Vida)長官はデラローサ氏を「逃亡中の容疑者」と位置付け、法執行機関に速やかな逮捕を命じた。

デラローサ氏は2016~18年まで国家警察長官を務め、ドゥテルテ政権の看板政策だった麻薬撲滅作戦を主導した人物として知られる。強硬な取り締まりによって数千人が死亡し、国際社会からは「超法規的殺害」との批判が相次いだ。警察側は犠牲者の多くが捜査中に抵抗したため射殺されたと説明してきたが、人権団体は警察や自警団による組織的な処刑が行われたと主張している。

ICCは少なくとも32人が殺害された2016~18年の事例について、デラローサ氏が犯罪行為を助長し、作戦遂行に関与した疑いがあるとして逮捕状を発付した。フィリピンは2019年にICC設立条約であるローマ規程から脱退しているが、ICCは脱退以前に起きた犯罪については管轄権を有すると主張している。

デラローサ氏はこれまでICCの権限を否定し、「合法的な国内手続きを経ない限り応じない」と反論してきた。さらに、自身の逮捕を阻止するため最高裁に申し立てを行ったが、最高裁は20日、差し止め請求を退けた。これにより、政府による身柄拘束への法的障害は大きく後退した。

一方、デラローサ氏は長期間にわたり所在を明かしておらず、事実上の潜伏状態にある。今月には一時的に議会上院に姿を見せたが、捜査当局が接近すると議会内で混乱が発生し、その後再び姿を消した。上院では支援議員らが同氏を保護する動きを見せ、政界全体を巻き込む騒動となった。

今回の問題はドゥテルテ(Rodrigo Roa Duterte)前大統領のICC裁判とも密接に結び付いている。ドゥテルテ氏は2025年に逮捕され、オランダ・ハーグで勾留中だ。ICCは同氏についても人道に対する罪で審理を進めており、デラローサ氏は「共犯者」の一人として位置付けられている。

マルコス・ジュニア(Ferdinand Marcos Jr.)大統領はICCへの正式復帰には否定的な立場を維持しているものの、国際刑事警察機構(インターポール)を通じた要請には応じる姿勢を示している。かつて同盟関係にあったマルコス派とドゥテルテはの対立はかつてないほど深まっており、今回の逮捕問題はフィリピン政治の新たな火種となっている。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします