パキスタン政府、インドに「インダス川水利条約」の履行求める
インダス川水利条約は、インダス川水系に属する6本の主要河川の利用方法を定めたもので、インドとパキスタンの水資源配分の基盤となってきた。
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パキスタン政府は6月30日、首都イスラマバードで開かれた「インダス川水利条約」に関する国際セミナーで、インドがパキスタンへの水供給を制限したり、水資源を外交・安全保障上の圧力として利用したりすることは「水の武器化」に当たると強く警告した。両国の関係は2025年のカシミール地方での観光客襲撃事件以降、急速に悪化しており、水資源を巡る対立も新たな火種となっている。
セミナーにはダール(Ishaq Dar)外相をはじめ政府高官や専門家が出席した。ダール氏は1960年に世界銀行の仲介で締結されたインダス川水利条約は現在も法的拘束力を持つ国際協定であり、一方の当事国が一方的に停止したり破棄したりすることは認められないと強調した。その上で、「水は協力のための資源であるべきで、対立のための手段であってはならない」と述べ、インドに対して条約の履行を求めた。
インダス川水利条約は、インダス川水系に属する6本の主要河川の利用方法を定めたもので、インドとパキスタンの水資源配分の基盤となってきた。この条約は両国がこれまで幾度も軍事衝突や外交危機を経験する中でも維持され、「世界で最も成功した国際河川協定の一つ」と評価されてきた。しかし2025年4月、インド支配下のカシミール地方で観光客26人が殺害された襲撃事件を受け、インド政府はパキスタンを拠点とする武装勢力が事件に関与したと非難し、条約停止を表明した。パキスタンは関与を否定するとともに、第三者による独立調査を提案している。
パキスタン政府はインドによる条約停止の決定以降、チェナブ川などで流量が減少していると主張している。また政府は条約で保障された水の供給を遮断したり削減したりする行為は「戦争行為」と見なすとの立場を改めて確認した。政府高官らは、農業用水や生活用水の大部分をインダス川水系に依存するパキスタンにとって、水資源は国家の存立に直結する問題であると訴えている。
さらに会議では、気候変動による氷河の融解や降水パターンの変化、水不足の深刻化を踏まえれば、両国が対立ではなく協力を優先すべきだとの意見も相次いだ。専門家は、人口増加や気候変動の影響で南アジアの水需要は今後さらに拡大すると予測しており、水資源を巡る政治的対立が地域の安定を損なう可能性があると警告している。
インド政府は今回のセミナーでのパキスタン側の発言に対して公式コメントを出していない。核兵器を保有する両国の関係は緊張状態が続いている。インダス川水利条約を巡る対立は安全保障だけでなく食料やエネルギー、水資源管理を含む幅広い問題へ発展する可能性がある。長年地域の安定を支えてきた条約の枠組みを維持し、対話を通じて問題解決を図ることが求められている。
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