◎金正恩 党総書記は先週、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射試験を命じた。平壌では大規模な軍事パレードが開かれたばかりだ。
2021年5月25日/北朝鮮、首都平壌の楽浪区域(Jon Chol Jin/AP通信)

韓国のメディアによると、北朝鮮では国境封鎖、天候不良、西側の制裁による危機的な食料不足が進行中で、人道状況は悪化の一途をたどっているという。

朝鮮中央通信社KCNA)の報道を分析するジャーナリストやメディアは、「北の慢性的な食料不足に拍車がかかり、いつ大飢饉に発展してもおかしくない」と警告している。

KCNAは今月初め、「農業政策の根本的な変化を議論するために、2月末に中央委員会が会合を開く予定」と報じた。韓国政府によると、朝鮮労働党がひとつの議題を議論するために会合を開くのは異例だという。

金正恩(Kim Jong Un)党総書記は先週、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射試験を命じた。平壌では大規模な軍事パレードが開かれたばかりだ。

韓国大統領府はICBM発射後、北で餓死者が出ていると警鐘を鳴らし、「核・ミサイル開発に傾倒する政府が市民の人権を侵害をしている」と糾弾した。

韓国KBSは政府関係者の話を引用し、「統一省は世界食糧計画(WFP)に北に支援を提供するよう要請した」と報じている。

韓国当局の推計によると、北の昨年の食料生産量は2021年から18万トン減少したという。

WFPも昨年6月、北が干ばつや洪水などの異常気象に見舞われ、冬と春の農作物生産・収穫が減少する恐れがあると懸念を表明した。

KCNAも昨年末、「同国は史上2番目にひどい干ばつに見舞われている」と報じた。

北朝鮮の情報を整理・集約する「38ノース(38North)」のアナリストによると、北の食料価格は昨年の不作の影響で高騰し、多くの市民が米より安価なトウモロコシに目を向けているという。

38ノースによると、北のトウモロコシ価格は先月初めに20%上昇したという。米の価格は不明だが、韓国KBSは「天候不良の影響で収穫量が激減し、平壌の市民でも入手が困難になっている」と報じている。

38ノースは「トウモロコシの価格高騰は米を含む他の食品が入手しにくくなったことを示している」と指摘している。

北は世界で最も貧しい国のひとつである。正確な数値は不明だが、米中央情報局(CIA)の2015年の推定によると、1人あたりGDPは約1700ドル。韓国の2021年の1人あたりGDPは約3万5000ドル。

北で1994~98年頃に発生した大飢饉による餓死者および栄養不足に関連する病で死亡した市民は200万~350万人と推定されているが、正確な死者数は不明だ。韓国の専門家はこの規模の飢饉が発生する可能性は低いとみている。

韓国KBSは21日、専門家の話を引用し、「北の厳しい国境警備、食料事情、ミサイル開発などを正確に把握する術はなく、飢饉が発生しても人道機関の立ち入りが許可されない限り、実態を把握することはできない」と報じた。

北朝鮮、首都平壌、軍事パレード中に公開された大陸間弾道ミサイル(Getty Images/AFP通信)
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