SHARE:

NZ政府、公務員約8700人削減へ、労働組合と野党は反発

政府は今後3年間で24億NZドル(約2220億円)の歳出削減を見込んでいる。
2026年4月21日/ニュージーランド、首都ウェリントン、記者団の取材に応じるラクソン首相(AP通信)

ニュージーランド政府は19日、2029年までに公共部門職員の約14%にあたる約8700人を削減する方針を発表した。財政赤字の圧縮と歳出削減を目的とした大規模な行政改革であり、ウィリス(Nicola Willis)財務相は「現在の政府機構は持続不可能で、国際水準ともかけ離れている」と強調した。政府は今後3年間で24億NZドル(約2220億円)の歳出削減を見込んでいる。

発表によると、公共部門職員数は2025年末時点の約6万3700人から、2029年半ばまでに5万5000人程度へ縮小される。これは人口約530万人の同国において、公務員数を人口比1.2%から1%へ引き下げる水準となる。削減対象には中央省庁や各種政府機関が含まれるが、軍、教師、医師などの分野は除外されるという。政府は同時に、省庁や行政機関の統廃合も進め、「より小さく効率的な政府」を目指すとしている。

今回の改革では、人工知能(AI)の活用拡大も柱の一つに据えられた。ウィリス氏は行政サービスのデジタル化とAI導入によって業務効率を高め、人員削減を補う考えを示した。政府は各省庁に対し、来年度予算で運営費を2%削減し、その後2年間は毎年5%ずつ削減する方針を提示している。こうした緊縮政策は11月に予定される総選挙を前に、財政規律を重視する姿勢を有権者に示す狙いがあるとみられている。

一方、労働組合や野党は強く反発している。最大の公務員労組である公共サービス協会(PSA)は「すでに多くの公共サービスが人員不足に陥っている」と批判し、さらなる削減によって教育、福祉、地域支援などが深刻な影響を受けると警告した。野党・労働党のヒプキンス(Chris Hipkins)党首も、「地域社会と最前線のサービスを犠牲にする政策だ」と批判している。

ニュージーランドでは2023年に発足した中道右派の国民党連立政権が「肥大化した官僚機構の見直し」を掲げてきた。すでに2024年以降、各省庁では人員削減が進められ、教育省や文科省などで数百人規模の削減案が打ち出されている。統計局や研究機関でも早期退職募集が行われ、政府全体で既に数千人規模の雇用が失われている。

同国経済は現在、景気後退と失業率上昇に直面している。住宅価格の低迷や消費減速に加え、インフレ対策の高金利政策も続いており、家計への負担は重い。こうした中で大規模な公務員削減を進めれば、雇用不安や景気悪化をさらに深刻化させるとの懸念も広がっている。特に首都ウェリントンは公務員への依存度が高く、地域経済への影響は避けられないとみられている。

ラクソン(Christopher Luxon)首相は「効率化によって必要な公共サービスは維持できる」と強調するが、AI導入による代替がどこまで現実的かについては専門家の間でも意見が分かれている。行政改革を通じて財政再建を進める政府と、公共サービス維持を訴える労組・野党との対立は総選挙に向けた大きな争点となりそうだ。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします