アフリカ2026年5月21日ケニア裁判所、未成年者同士の合意に基づく性交渉に刑法適用認めず 増永 建太郎 問題となったのは、性犯罪法の一部条項である。ケニア、首都ナイロビ(Getty Images)ケニアの裁判所が20日、未成年者同士の合意に基づく性交渉に性犯罪法を適用することはできないとの判断を示し、同国の若者の権利や性教育政策に大きな影響を与える判決として注目を集めている。今回の判断は思春期の若者同士の関係を一律に犯罪化してきた従来の運用を見直す契機になるとみられている。問題となったのは、性犯罪法の一部条項である。同法では18歳未満の性交渉を禁じ、未成年者同士の関係であっても「性的暴行」や「児童への性的行為」として立件されるケースがあった。人権団体などは、こうした運用が若者の自由や健康を脅かしているとして、法律の適用差し止めを求めて提訴していた。訴訟では、17歳の少年が16歳の交際相手と部屋にいたところを警察に摘発され、性的暴行容疑で訴追された事例などが取り上げられた。また、別の17歳の少年も、交際相手の妊娠をきっかけに起訴されたが、後に訴えは取り下げられている。原告側は、こうしたケースは搾取や暴力ではなく、同年代の若者同士による合意の上の関係であり、刑事罰の対象にすべきではないと主張した。判事は判決の中で、問題となった条項について、「未成年者同士の合意に基づく性交渉には適用できない」と判断した。これにより、係争中だった2件の裁判は停止され、現行の形では審理を続けられなくなった。裁判所は若者同士の交際と、大人による児童への性的搾取を区別する必要があるとの認識を示した形だ。判決を支持する人権団体は、これまで多くの若者が警察への摘発や長期収監を恐れ、保健サービスや性教育から遠ざかっていたと指摘する。提訴に関わった「アフリカ青少年ネットワーク(NAYA)」のビクター・ラスグ(Victor Rasuk)氏は声明で、「若者は恋愛関係だけで警察に連行される恐怖の中で暮らしてきた」と述べ、法改正の必要性を訴えた。一方で、保守派や一部当局者からは懸念の声も上がっている。現行法の厳格な適用は児童を性的搾取から守るために必要だとする立場であり、法の適用を緩和すれば大人による犯罪を見逃す抜け穴になる可能性があると警戒している。ケニアでは宗教的・保守的価値観が根強く、性や若者の権利を巡る議論は社会的対立に発展しやすい。今回の判決は若者の性的自己決定権や人権を重視する方向への一歩と受け止められている。今後は警察や司法当局の運用見直しに加え、若者向けの性教育や保健支援体制の整備が求められることになりそうだ。