SHARE:

インドネシア政府、偽情報対策を利用して反体制派に圧力=アムネスティ

アムネスティの報告書「Building Up Imaginary Enemies(架空の敵をでっち上げる)」によると、インドネシアでは政権批判者を「外国勢力の手先」や「外国の代理人」と決めつける中傷投稿が、SNS上で組織的に拡散されているという。
インドネシア、首都ジャカルタ、スビアント大統領(ロイター通信)

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは19日、インドネシア政府や軍が、オンライン上の偽情報キャンペーンを利用して活動家やジャーナリストを攻撃し、政権批判を封じ込めているとする報告書を公表した。報告書はスビアント(Prabowo Subianto)大統領の就任以降、軍の政治関与が拡大する中で、民主主義の後退が進んでいると警告している。

アムネスティの報告書「Building Up Imaginary Enemies(架空の敵をでっち上げる)」によると、インドネシアでは政権批判者を「外国勢力の手先」や「外国の代理人」と決めつける中傷投稿が、SNS上で組織的に拡散されているという。アムネスティはこうした投稿の発信源を分析した結果、軍関連アカウントや与党系のアカウントとの関連性が確認されたとしている。

報告書では、3月に起きた人権活動家アンドリ・ユヌス(Andri Yunus)氏への攻撃事例が象徴的なケースとして挙げられている。ユヌス氏は軍の政治介入拡大に反対する抗議活動に参加した翌日、「外国の利益のために活動している」と非難する動画がSNS上で急速に拡散された。その後、ユヌス氏は何者かに硫酸をかけ、片目の視力を失った。アムネスティはオンライン上の中傷が現実の暴力につながった典型例だと指摘している。

また、環境保護団体グリーンピースに対しても、政府高官の発言をきっかけに中傷キャンペーンが展開された。政府高官がグリーンピースの活動を外国勢力と結びつけるような発言を行った後、同団体をパプアの分離独立勢力と関連づける投稿が大量に拡散されたという。

アムネスティはこうした偽情報の拡散を助長している要因として、巨大IT企業の対応不足も問題視した。メタ、ティックトック、X(旧ツイッター)、ユーチューブなどのプラットフォームでは、有害な投稿の多くが数カ月にわたり放置されていたと指摘している。アムネスティが各社に問い合わせたところ、回答したのはティックトックのみで、監視体制を強化すると説明したという。

一方、スピアント氏と国軍は現時点でコメントを出していない。スピアント氏は元陸軍特殊部隊司令官で、過去には人権侵害への関与疑惑も指摘されてきた人物である。2024年の大統領就任後は軍人の政府機関登用を進めるなど、軍の影響力を強めている。

インドネシアは世界を代表する民主主義国家として他国のロールモデルになってきたが、近年はネット空間における言論統制や偽情報拡散への懸念が高まっている。アムネスティは「政府に批判的な声を封じ込めるため、デジタル空間が政治的武器として利用されている」として、政府とSNS企業双方に透明性と説明責任の強化を求めた。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします