◎5月1日からワクチンを接種できるようになる18歳~44歳の市民は約6億人と推定されている。
2021年4月30日/インド、首都ニューデリーのワクチン接種会場(ゲッティイメージズ/ロイター通信)

インド政府は5月1日からワクチン接種の対象者を国内の全ての成人に拡大する。

世界最大のワクチンメーカー、セラム・インスティチュート・オブ・インディア(SII)は昨年、2021年7月までに国内の成人、約2億5,000万人にワクチンを供給するという野心的な目標を掲げた。さらに、世界保健機関(WHO)などが主導するCOVAXイニシアティブへのワクチン供給も開始し、同社の製造するアストラゼネカワクチンは世界中に展開された。

3月末、インド政府は国内の感染状況悪化を受け、SIIにアストラゼネカワクチンの輸出を停止するよう命じたが、接種は思うように進まず、4月末時点で2回接種を終えた人は約2,600万人、1回接種した人は約1億2,400万人にとどまっている。

現地メディアによると、政府は5月1日のワクチン解禁に伴い、4月28日にワクチン予約サイトをオープンしたが、推定数百万人が一斉にアクセスした結果、サイトとそれに付随する専用アプリはクラッシュしたという。

5月1日からワクチンを接種できるようになる18歳~44歳の市民の数は約6億人と推定されている。

専用アプリで予約を試みた女性はAP通信の取材に対し、「アクセスできませんでした」と述べた。「アプリは開きません。何分待っても開きません...」

ソーシャルメディアには専用アプリのクラッシュに不満を表明する投稿が相次いだ。その後、サイトとアプリは復旧したが、ワクチンを予約できた人はわずか1,300万人にとどまったという。女性は予約に失敗した。「ワクチンは売り切れました」

一方、現地メディアによると、全国各地のワクチン接種会場には45歳以上のワクチン未接種者が殺到し、大変な騒ぎになっているという。AP通信の取材に応じた50歳の女性は、「5月1日からワクチンの接種が困難になると聞き、急いで来ました」と述べた。

保健当局のまとめによると、45歳以上の市民、推定2億人がまだワクチンを接種していないという。専門家はAP通信の取材に対し、「45歳以上の市民への接種を先に終えるべきでした」と述べた。「5月1日から推定6億人がワクチン争奪戦に加わります...」

<インドの人口統計>
・18歳未満:約3.5億人(推定)
・18歳~44歳:約6億人(推定)
・45歳以上:約4.4億人(推定)

2021年4月30日/インド、ジャンムー・カシミールの火葬場(AP通信/Channi Anand)

保健当局のまとめによると、4月30日の新規陽性者数は世界最高を更新する401,993件、死亡者は3,523人、過去7日間の新規症例は250万件を超えたという。

政策研究センターのパーサー上級研究員は、「若い世代でも重症化する可能性が高いと伝えられている変異種の登場でワクチン需要はさらに高まり、大渋滞を引き起こしました」と述べた。「政府は接種状況を注意深く見守り、弱者に焦点を合わせるべきでした。基礎疾患を持っている高齢者は18歳の若者よりはるかに脆弱です」

政府の解禁発表以来、ワクチン接種会場には連日長蛇の列ができ、感染拡大のリスクが高まっている。

ワクチンに関する問題は供給不足だけではない。

ナレンドラ・モディ首相は先日、州政府と民間病院にワクチンメーカーから直接ワクチンを購入するよう命じた。これまでインド国内で流通していたワクチンは、連邦政府がSIIとバーラト・バイオテックから一括購入したアストラゼネカワクチンだけだった。

現地メディアによると、断崖絶壁に立たされている28の州政府と民間病院にワクチンメーカーと交渉する体力はなく、ワクチンを高値で売りつけられているという。

連邦政府はSIIとバーラト・バイオテックからワクチン1回分を150ルピー(約220円)で購入できるが、州政府は2倍、民間病院は8倍の金額を支払わなければならない。

パーサー上級研究員は、「インドは世界で唯一、地方政府と民間病院にワクチン購入を許可した国です」と述べた。「この政策は大失敗でした。モディ首相はワクチンの供給不足の責任を州政府に押し付けようとしています」

連邦政府と州政府にコロナ関連の取り組みを助言しているK.スリナート・レディ顧問もモディ首相の政策に強い懸念を表明した。「予防接種は無料でなければなりません。それは政府の仕事です。しかし、ワクチンを高値で購入させられた民間病院はそれを販売し、購入費用を回収しなければなりません。無料で配れば、彼らは破産します」

「なぜ州政府は連邦政府の2倍の価格でワクチンを購入させられるのですか?州政府も納税者のお金を使っています...」

現地メディアによると、2つの大手民間病院は5月1日から18歳〜44歳へのワクチン接種を開始すると発表したが、どのようにワクチンを確保したかは明らかにされていないという。専門家は、ワクチンの供給が安定するまで、接種対象者は高齢者に限定しなければならないと警告している。

保健当局のまとめによると、45歳以上の市民への接種を完了させるためには、推定6億1,500万回分のワクチンが必要だという。

パーサー上級研究員は、「18歳~44歳の市民、推定6億人の接種を完了させるためには、12億回分のワクチンが必要です」と述べた。「政府はワクチン供給は加速すると信じていますが、SIIの供給体制はまだ整っていません。SIIは5月に約7,000万回、バーラト・バイオテックは約2,000万回分を供給する予定です。今のままでは、全国の8億人が限られたワクチンを奪い合うことになります...」

<インドの新規陽性者と死亡者>
2月1日:8,635件/94人
2月8日:9,110件/78人
2月15日:9,121件/81人
2月22日:10,584件/78人
3月1日:12,286件/91人
3月8日:15,388件/77人
3月15日:24,492件/131人
3月22日:40,715件/199人
3月29日:56,211件/271人
4月1日:81,466件/469人
4月8日:131,968件/780人
4月15日:217,353件/1,185人
4月18日:273,802件/1,619人
4月20日:295,158件/2,023人
4月21日:314,644件/2,104人
4月22日:332,921件/2,263人
4月23日:346,786件/2,624人
4月24日:349,691件/2,767人
4月25日:352,991件/2,812人
4月26日:323,023件/2,771人
4月27日:362,757件/3,293人
4月28日:379,257件/3,645人
4月29日:386,555件/3,498人
4月30日:401,993件/3,523人

2021年4月30日/インド、ジャンムー・カシミールの火葬場(AP通信/Channi Anand)
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