SHARE:

インドの繊維工場で働く労働者の1日、あまりにも過酷な環境

世界銀行は同国の労働人口の約75%に当たる3億8000万人が暑熱の影響を受けていると推計している。
2026年5月28日/インド、西部グジャラート州スーラトの通り(AP通信)

インド西部グジャラート州スーラトの繊維工場で働くシバラム・プラダン(Sibaram Pradhan、35歳)さんは夜明け前から夕方まで過酷な一日を送っている。気候変動による猛暑が深刻化する中、工場の熱気と劣悪な住環境に耐えながら家族を養うため働き続ける姿は、南アジアの多くの出稼ぎ労働者が直面する現実を映し出している。

プラダンさんは東部オディシャ州の出身だ。故郷では台風や洪水、不安定な気候の影響で農業による生計維持が難しくなり、約2000キロ離れたスーラトに移住した。現在はポリエステル生地を生産する織物工場で働いている。スーラトは世界有数の合成繊維生産地として知られるが、その繁栄を支えているのは地方から流入する多数の移民労働者である。

午前6時の時点で室内はすでに蒸し暑い。プラダンさんは最大9人と狭い部屋を共有し、汗を流しながら目を覚ます。起床後は妻と2人の子どもにビデオ電話をかけ、短い祈りを捧げる。その後、長い廊下を歩いて共同トイレへ向かう。約100人がわずか2つのトイレと数本の水道を共用し、居住区全体では200人以上の労働者が生活している。部屋を仕切るのは薄いベニヤ板だけで、換気設備も天井扇風機が数台ある程度だ。室温は午前6時時点で38度に達し、夜になっても熱気はほとんど収まらない。

遅刻すれば賃金を減額される可能性があるため、身支度を済ませたプラダンさんは急いで工場へ向かう。勤務時間は12時間に及ぶこともある。担当するのは織機に糸を補充し、生地の品質を確認する作業で、一人で最大15台の機械を監督する。工場内には織機の轟音が響き渡り、その騒音は130デシベルに達する場合もある。暑さのため肌着と短パン姿で働き、何度も水を飲みながら汗を絞るようにして作業を続ける。

しかし危険なのは暑さだけではない。高速で動く機械に指を挟まれる事故も起きており、負傷すれば治療費は自分で負担しなければならない。欠勤期間中の賃金も失われるため、体調不良でも働き続ける労働者は少なくない。専門家は高温多湿な環境に化学物質の臭気や機械熱が加わることで、脱水症状やめまい、失神の危険が高まると警告している。長期的には肺や腎臓への悪影響も懸念されるという。

インドは気候変動の影響を最も受けやすい国の一つである。世界銀行は同国の労働人口の約75%に当たる3億8000万人が暑熱の影響を受けていると推計している。一方で、インド労働者の約9割を占める非正規労働者は十分な法的保護の対象外で、スーラトの繊維労働者の多くもその中に含まれる。

一部の工場では冷風機や換気設備の導入が進むものの、設備投資には費用がかかり、効果も限定的だ。経済環境の悪化や国際情勢の不安定化によって、経営者が新たな対策に踏み切れないケースも多い。

それでもプラダンさんは働き続ける。毎月約6000ルピー(約1万200円)を故郷へ送り、家族を支えている。「自分の子どもにはこの仕事をさせたくない」と語るその言葉には、過酷な労働環境から次の世代を解放したいという切実な願いが込められている。気候変動が労働現場に及ぼす影響が拡大する中、彼の生活は経済成長の陰で見過ごされがちな労働者の現実を浮き彫りにしている。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします