◎専門家は、「香港の民主化推進運動とジャーナリズムは死んだ」と述べた。
2021年6月23日/香港、アップルデイリー本社(AP通信/Kin Cheung)

6月24日、香港最後の民主化推進新聞アップルデイリー紙が最終版を発行し、事務所を閉鎖した。同紙は先日、国家安全維持法に基づく治安当局の取り締まりで幹部と編集者を失い、資産数百万ドルを凍結され、閉鎖を余儀なくされた。

アップルデイリーの親会社であるネクストデジタル社の取締役会は23日の声明で、「印刷版とオンライン版を終了する」と発表した。

26年前にアップルデイリーを創設したメディア王のジミー・ライ氏は、物議を醸す国家安全維持法が施行されてからわずか数か月後に逮捕され、投獄された。

アップルデイリーは23日午後の声明で本社を閉鎖すると発表し、香港最大の民主化推進新聞は26年の歴史に幕を下ろした。専門家は、「香港の民主化推進運動とジャーナリズムは死んだ」と述べた。

1995年に初版を発行したアップルデイリーはタブロイド新聞としての地位を確立し、センセーショナルな記事と大胆な見出しは多くの注目を集めた。初期の報道は娯楽と犯罪に特化し、非倫理的な記事を掲載することも珍しくなかった。

しかし、2000年代初頭の民主化運動以降、記事の中心は政治の話題になり、タブロイド紙は民主化推進新聞に進化した。

2021年6月18日/香港の印刷所、アップルデイリー紙を準備する印刷所職員(AP通信/Kin Cheung)

アップルデイリーは「香港の自由を推進する市民の声」に成長したが、近年、香港政府は報道の自由を厳しく制限するようになった。民主主義を支持するメディアはオンライン上には存在するが、紙の新聞は同紙が最後だった。

アップルデイリーはインスタグラムに感謝のコメントを投稿した。「...私たちは26年間香港の人々と共有した民主化への決意を維持すると約束します」

24日の最終版は100万部印刷される予定。2021年の平均発行部数は約80,000部と伝えられている。

中国共産党は昨年6月、国際的な批判を無視して香港国家安全維持法を施行した。指導部は香港の安定を取り戻すためと主張したが、世界中の専門家が「言論の自由と民主主義を求める平和的な抗議は法に打ち負かされるだろう」と警告した。

治安当局は法律の施行からわずか数カ月後にジミー・ライ氏、メディア関係者、民主活動家などを逮捕し、アップルデイリー本社には数百人の警察官が押し寄せた。

しかし、同紙は後退せず、「治安当局は権力を乱用し、平和的な抗議者と言論の自由を殺そうとしている」と激しく反発した。

ライ氏は刑務所に収監される直前のインタビューで、「脅迫には屈しない」と述べた。「脅迫を打ち負かす方法は、恐怖に立ち向かい、私は恐れていないと明確に示すことです」

しかし、治安当局は6月17日に再びアップルデイリー本社を襲撃し、国家安全維持法違反で幹部および編集者など合わせて5人を逮捕し、資産230万ドル(約2.5億円)を凍結した。

香港中文大学のロクマン・ツイ助教授は英BBCニュースの取材に対し、「政府はアップルデイリーを強制閉鎖した」と述べた。「資産を凍結されれば打つ手がありません...」

ライ氏の顧問を務めるマーク・サイモン氏はBBCに、「ネクストデジタル社の取締役会はアップルデイリーの運命を決めるために開催された」と語った。「警察は会社の閉鎖を待っていました。閉鎖しなければ次の攻撃に移行していたでしょう」

アップルデイリーによると、治安当局は23日に香港の安全保障を危険にさらすという理由で55歳の男性を逮捕したという。この男性は、LiPingという仮名で社説を書いていたと伝えられている。

ドイツ外務省のマリア・アデバール報道官はアップルデイリーの閉鎖を「香港の報道の自由に対する大きな攻撃」と呼び、当局を非難した。

アムネスティ・インターナショナルのアジア太平洋地域ディレクター、ヤミニ・ミシュラ氏は、「アップルデイリーに対する警察の取り締まりは、香港で活動しているすべてのメディアの背筋を震わせる」と述べた。

2021年6月23日/香港、アップルデイリー本社(AP通信/Kin Cheung)
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