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外国人観光客がインドのリゾート地ゴアに愛想を尽かした理由

ゴアは1970年代以降、ヒッピー文化の聖地として人気を集めた。
インド、西部のリゾート地ゴアのビーチ(Getty Images)

インド西部のリゾート地ゴアで、外国人観光客の減少が深刻化している。かつて「インドの楽園」と呼ばれ、欧米やロシアから多くの旅行者を集めてきたゴアだが、近年は東南アジアの観光地との競争に敗れつつある。背景には物価上昇やインフラ不足、治安への不安、観光地としての個性の喪失など、複数の問題が絡み合っている。

ゴアは1970年代以降、ヒッピー文化の聖地として人気を集めた。美しいビーチと自由な空気、安価な滞在費、音楽やパーティー文化が外国人旅行者を引き寄せ、特にイギリス、ドイツ、ロシア、イスラエルなどから多くの観光客が訪れていた。しかし現在、その魅力は急速に薄れている。海外メディアは外国人旅行者が「ゴア離れ」を起こしていると報じている。

大きな要因の一つは価格の上昇だ。観光客からは「以前より高額になったのにサービスの質が下がった」との不満が多く聞かれる。ホテル代や飲食費、タクシー料金は上昇を続け、同じ予算ならタイのプーケットやベトナムのダナン、インドネシアのバリ島の方が快適に過ごせるという声が強い。特にタクシー業界では、いわゆる「タクシーマフィア」による高額請求が長年問題視されている。

さらに、観光インフラの整備不足も深刻だ。道路渋滞や停電、不安定なインターネット環境、衛生状態の悪さなどが旅行者の不満につながっている。かつての静かで落ち着いた雰囲気は失われ、現在では「海辺のデリー」と皮肉られることもある。観光客の急増に対し、都市整備が追いつかなかった結果だと指摘されている。

安全面への懸念も無視できない。近年は犯罪や詐欺、薬物事件などが相次ぎ、一部の外国政府は旅行者向け注意喚起を出している。SNS上でも「観光客を狙ったぼったくり」や「女性旅行者への迷惑行為」が話題になっている。地元掲示板やRedditでは、「以前の穏やかなゴアは消えた」と嘆く投稿が相次いでいる。

加えて、ロシア・ウクライナ戦争や中東情勢の悪化も影響している。ロシアとイスラエルはゴア観光の主要市場だったが、国際情勢の不安定化によって旅行需要が減少した。コロナ後の観光回復も鈍く、チャーター便の本数はピーク時から大幅に減ったという。

それでもゴア州政府は観光復活を目指している。新空港の整備やビーチ以外の文化・自然体験を売り出す「Goa Beyond Beaches(ビーチの先のゴア)」政策などを進めているが、効果は限定的だ。国内観光客は増えている一方、外国人観光客数はコロナ前の水準に戻っていない。

かつて世界中の若者を魅了した自由と開放感の象徴であったゴア。だが商業化と混雑、物価上昇によって、その独自性は失われつつある。観光地として再び輝きを取り戻せるかどうかは、単なる観光客数の回復ではなく、「ゴアらしさ」をどこまで再生できるかにかかっている。

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