◎恒大集団は債務の処理に必要な資金の調達に苦労しており、過去6カ月の株価の下げ幅は80%を超えていた。
2021年9月13日/中国、広東省深セン市にある恒大集団の本社ビル(ロイター通信)

9月22日、債務危機に直面している中国の不動産開発大手「恒大集団」は、中国の債券保有者と合意に達したと発表した。

同社は23日に海外の債券保有者に8,350万ドル(約90億円)の利息を支払う予定である。

声明発表後、恒大集団の株価は前日から20%以上急上昇し、香港証券取引所は売買を一時停止した。その後は売りが先行したものの、午前中の時点で上げ幅は約10%に達した。

恒大集団は債務の処理に必要な資金の調達に苦労しており、過去6カ月の株価の下げ幅は80%を超えていた。負債額は3,050億ドル(約33兆円)にのぼると見積もられている。

同社は22日の声明で国内の債券への利払いを行うと述べ、売りを抑えることに成功した。しかし同社は、利子を全て支払うかどうかおよび、支払う時期には言及しておらず、「支払いが滞るという懸念は債権者との交渉で解決した」とだけ述べた。

また、23日に支払わなければならないオフショア債の利息8,350万ドルを処理できるかどうかは明らかにしなかった。投資家との合意に基づき、同社には30日間の猶予期間が与えられ、それでも利息を支払えなかった場合はデフォルト(債務不履行)になる。

一部のアナリストは、この規模の企業のデフォルトは中国経済に大きな影響を与え、危機は中国から世界に広がる可能性があると警告している。

共産党指導部は恒大集団の債務危機に関する声明をまだ発表していないが、多くの金融アナリストは、「共産党は未完成の物件を購入した市民を保護するために介入する可能性が高い」と指摘した。同社は未完成の開発プロジェクトを1,300件以上抱え、100万人以上が新居への引っ越しを待っていると伝えられている。

習近平 国家主席は国内の富を全国に広げ、富裕層と貧困層のギャップを埋める「先富論」を推進しており、恒大集団に投資した銀行や投資家を犠牲にしてでも住宅購入者を支援する可能性が高いと予想されている。

一部の投資家は22日の声明を前向きな展開と見なしたが、大半は警戒態勢を維持しているように見える。

香港科技大学 新興市場研究所のドナルド・ロウ所長は22日、「声明だけで債務危機を乗り越えたと判断することはできない」と指摘した。「共産党の救済計画が進んでいるという可能性もあります。指導部が債務の踏み倒しを許可すれば、投資家と銀行は厳しい現実に直面するでしょう」

フィデリティ・インターナショナルの投資ディレクター、キャサリン・ヨン氏は現地メディアのインタビューの中で、「指導部が恒大集団をどのように扱うかは誰にも分からず、投資家は不安を抱え続けることになるだろう」と語った。

一部のアナリストは、「共産党は債務を踏み倒したうえで恒大集団を管理下(国有化)に置く」と主張したが、それを実行すれば指導部は銀行と投資家の信頼を失い、同じように債務の処理に苦労している企業を追い詰める可能性がある。

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