ベネズエラ政府、前大統領の側近を国外追放、米国に移送
サーブは米国で複数の刑事捜査対象となっており、今後はマネーロンダリング(資金洗浄)や汚職事件などを巡る司法手続きに直面する見通しだ。
とアレックス・サーブ氏(AP通信).jpg)
ベネズエラ政府は16日、マドゥロ(Nicolas Maduro)前大統領の側近として知られた実業家アレックス・サーブ(Alex Saab)容疑者を米国へ移送したと発表した。サーブは米国で複数の刑事捜査対象となっており、今後はマネーロンダリング(資金洗浄)や汚職事件などを巡る司法手続きに直面する見通しだ。今回の措置はかつてマドゥロ政権が「外交官」として擁護していた人物を自ら引き渡す形となり、ベネズエラ政界に大きな衝撃を与えている。
サーブはコロンビア生まれで、長年にわたりマドゥロ政権の資金調達役を担った人物である。米政府は以前から、サーブ氏を「マドゥロの財布役」と呼び、国際的な制裁回避や不透明な金融取引に関与していたと非難してきた。特に低所得層向け食料配給制度「CLAP」を巡る不正疑惑では、政府契約を利用して巨額の利益を得ていたとされ、米司法省は複数の企業や口座を通じた資金洗浄を追及している。
サーブは2020年、西アフリカのカーボベルデで逮捕され、その後米国へ移送された。しかし2023年、米国人拘束者との交換条件として当時のバイデン政権が恩赦を与え、ベネズエラへ帰国していた。当時のマドゥロ政権は彼を「国家の英雄」として迎え入れ、政府高官に任命していた。だが今年1月、マドゥロが米軍の作戦によって排除され、米国で麻薬密輸関連罪に問われる事態となると、政権内部の力関係は急激に変化した。
現在のベネズエラでは、ロドリゲス暫定政権が実権を握っている。同政権は米国との関係改善を進める一方、石油や鉱業分野への米企業投資を受け入れる姿勢を示している。サーブは新政権発足後に閣僚職を解任され、一時は自宅軟禁状態にあるとも報じられていた。今回の移送は、ロドリゲス政権が旧マドゥロ派との距離を明確にし、対米協調を優先した結果とみられている。
一方で、この決定は与党内の分裂をさらに深める可能性がある。マドゥロ派の支持者にとって、サーブは米国の制裁下で経済を支えた象徴的存在だった。その人物を引き渡したことで、左派勢力内部では「裏切り」との批判も出始めている。サーブが米国の捜査に協力し、マドゥロ前政権の資金の流れや汚職構造について証言する可能性も取り沙汰されている。
米国とベネズエラは長年対立してきたが、1月の政権交代や国際情勢の変化によって急速に再編が進んでいる。今回のサーブ移送はその象徴的出来事といえそうだ。今後の裁判でどのような証言が飛び出すのか、国際社会の注目が集まっている。
