SHARE:

米軍によるベネズエラ犯罪組織の首領殺害、トランプ政権の「国際法より国益優先」鮮明に

トレンデアラグアはベネズエラの刑務所内で誕生した犯罪組織で、近年はコロンビア、ペルー、チリ、米国などへ活動範囲を拡大してきた。
ベネズエラのギャング「トレンデアラグア」の戦闘員(Getty Images)

米軍がベネズエラ南東部で実施した空爆により、国際犯罪組織「トレンデアラグア」の首領ゲレーロ・フローレス(Héctor Rusthenford Guerrero Flores(通称ニーニョ・ゲレーロ)が殺害された。この作戦はトランプ(Donald Trump)大統領が進める新たな「麻薬戦争」の象徴的な事例と受け止められており、従来の法執行中心の対策から軍事力を前面に押し出す政策転換を鮮明に示した。

トランプ氏は13日、米南方軍(SOUTHCOM)がベネズエラ当局と連携して作戦を実施したと発表した。標的となったのは、違法金採掘が横行する南東部ボリバル州の山間部にあるゲレーロの潜伏拠点だった。米政府は同容疑者を麻薬密輸、人身売買、資金洗浄、恐喝などの犯罪に関与したとして指名手配し、逮捕につながる情報に500万ドルの懸賞金をかけていた。

トレンデアラグアはベネズエラの刑務所内で誕生した犯罪組織で、近年はコロンビア、ペルー、チリ、米国などへ活動範囲を拡大してきた。米国は2025年に同組織を外国テロ組織に指定し、単なる犯罪集団ではなく国家安全保障上の脅威として位置付けている。

今回の作戦が注目されるのは、米国が国外の犯罪組織指導者に対し直接軍事力を行使した点にある。専門家によると、トランプ政権は麻薬対策と対テロ戦争の手法を融合させ、犯罪組織を「テロリスト」と見なして軍事攻撃の対象とする新たな戦略を推進している。これまでにもカリブ海や南米地域で対麻薬作戦を名目とした軍事行動が拡大しており、今回の空爆はその延長線上に位置付けられる。

一方で、この作戦の効果を疑問視する声も少なくない。麻薬組織の最高幹部を排除する「キングピン戦略(Kingpin Strategy)」は過去にも繰り返されてきたが、多くの場合、後継者が組織を引き継ぎ、麻薬取引そのものを根絶するには至らなかった。トレンデアラグアも麻薬密輸だけでなく、恐喝や人身売買、違法採掘など多様な犯罪で収益を得ているため、指導者の死が組織全体の弱体化につながるかは不透明との見方が強い。

さらに、人権団体や法学者からは、国外での軍事行動が国際法上の問題を引き起こす可能性や、民間人被害を招く危険性を懸念する声も上がっている。トランプ政権は犯罪組織との戦いを国家安全保障政策の中心課題に据えているが、その手法を巡る議論は今後も続きそうだ。今回の空爆は米国の対中南米政策が法執行から軍事介入へと重心を移しつつある現実を印象付ける出来事となった。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします