中国の消費者意識に変化、環境や食品安全への関心高まる、アマゾン熱帯雨林の保護に
アマゾン熱帯雨林では違法伐採や農地開発による森林破壊が深刻化している。
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中国の消費者意識の変化が、南米アマゾン熱帯雨林の保護につながる可能性が浮上している。これまで中国は「価格重視」の巨大市場として知られてきたが、近年は環境や食品安全への関心が高まり、持続可能な生産方法で作られた商品の需要が徐々に拡大している。こうした変化を受け、中国向けブラジル産牛肉の取引でも「森林破壊を伴わない製品」を求める動きが広がり始めた。
その象徴となっているのが、中国・天津市の食肉業界団体による新たな取り組みだ。天津肉類協会を率いる邢燕玲(Xing Yanling)氏は、今年末までに「森林破壊ゼロ認証」を受けたブラジル産牛肉5万トンを輸入する方針を表明した。この数量はブラジルが今年中国へ輸出すると見込まれる牛肉全体の約4.5%に相当する。中国は世界最大級の牛肉・大豆輸入国であり、その消費行動の変化は国際市場に大きな影響を与える可能性がある。
アマゾン熱帯雨林では違法伐採や農地開発による森林破壊が深刻化している。特に問題視されているのが牧畜業で、ブラジルの非営利団体「マップビオマス」によると、森林伐採後の土地の約90%が牛の放牧地に転換されているという。牛肉需要の拡大はアマゾン破壊と密接に結び付いているとされ、中国市場の動向もその一因と見なされてきた。
しかし、中国国内では近年、食品の安全性や生産履歴への関心が高まっている。経済成長に伴い、中間層を中心に「安いだけでは不十分」と考える消費者が増え、環境に配慮した商品に対して追加料金を支払う動きも見られる。天津の輸入業者は森林破壊や奴隷労働と無関係であることを証明できる牛肉に対し、通常より約1割高い価格を支払う意向を示している。
こうした取り組みでは、ブラジルの非営利団体「イマフローラ」が開発した「ビーフ・オン・トラック」と呼ばれる認証制度が活用される。製品にはQRコードなどを通じて生産地情報が付与され、消費者が牛肉の供給経路を確認できる仕組みだ。中国では既に卵などで生産履歴を追跡できる商品が普及しており、「環境配慮型牛肉」も同様に市場に受け入れられる可能性があるという。
中国政府も近年、貿易と環境保護を両立させる姿勢を打ち出している。2019年には違法木材取引を禁止する森林関連法を整備し、2023年にはブラジル政府と「貿易による違法森林破壊の根絶」に向けた共同声明を発表した。また、中国国有穀物大手COFCOも、サプライチェーンから森林破壊を排除する方針を掲げている。
一方で、課題も残る。ブラジルの畜産業界では牛の移送記録を改ざんして違法伐採地由来の牛を「合法」と偽装する、いわゆる「牛ロンダリング」が問題化している。追跡制度の整備は十分とは言えず、認証制度がどこまで実効性を持つかには懐疑的な声もある。また、中国は今年、国内産業保護のため牛肉輸入枠を設定し、新たな認証制度が輸出の障壁になるとの懸念もブラジル側には存在する。
それでも専門家は中国市場の変化がアマゾン保護に与える影響は大きいとみている。世界最大規模の消費国である中国が、価格だけでなく環境負荷を重視する市場へ変化すれば、ブラジルの生産者も持続可能な生産へ転換せざるを得なくなる可能性があるためだ。消費者の選択が遠く離れた熱帯雨林の未来を左右する時代が訪れつつある。
