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米軍、東太平洋で麻薬密輸船を攻撃、2人死亡、1人生還

米軍は標的となった船について「麻薬密輸ルートを航行していた」と説明しているが、詳細な証拠は示しておらず、人権団体などからは「超法規的殺害だ」との批判が強まっている。
米空母ハリー・S・トルーマン(ロイター通信)

南方軍(SOUTHCOM)は9日、東太平洋上で麻薬密輸に関与していた船舶を攻撃し、乗っていた2人が死亡、1人が生存したと発表した。米軍は標的となった船について「麻薬密輸ルートを航行していた」と説明しているが、詳細な証拠は示しておらず、人権団体などからは「超法規的殺害だ」との批判が強まっている。

SOUTHCOMによると、攻撃は東太平洋上で実施された。作戦後、米沿岸警備隊に対して捜索・救助活動が要請され、生存者の救助が進められたという。米誌ニューヨーク・タイムズはメキシコ海軍が救助活動を担当したと報じている。米軍は死亡した2人を「麻薬テロリスト」と表現しているが、氏名や国籍、所属組織などは明らかにしていない。

公開された映像では、小型船舶が海上を航行中にミサイル攻撃を受け、直後に大きな炎と煙を上げる様子が確認できる。SOUTHCOMは「情報機関の分析により、船舶が既知の麻薬密輸ルートを移動していたことが確認された」と説明している。また、船は「指定テロ組織」によって運用されていたとしているが、具体的な組織名は示されていない。

今回の攻撃はトランプ政権が進める「麻薬テロ」対策の一環である。米政府は2025年以降、中南米周辺海域で麻薬密輸船への軍事攻撃を拡大し、カリブ海や東太平洋で相次いで空爆を実施してきた。こうした一連の攻撃による死者は190人を超えている。特に2026年春以降、東太平洋での攻撃頻度が急増し、今回の攻撃は5月だけでも3件目となる。

トランプ政権は麻薬カルテルを「国家安全保障への脅威」と位置付け、フェンタニルなど合成麻薬の流入によって米国内で多数の死者が出ていることを踏まえ、「武力を用いた阻止は正当防衛に当たる」と強調してきた。国防総省もこれまでの作戦を支持し、「麻薬密輸組織との戦いは戦争に等しい」と発言している。

一方で、国際法上の問題を指摘する声は根強い。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)やアムネスティ・インターナショナルは米軍が十分な証拠を示さないまま船舶を攻撃しているとして、「超法規的殺害」に当たる可能性があると批判している。実際、これまでの攻撃でも、船が本当に麻薬を運搬していたのか明確な証拠が示されていないケースが少なくない。

さらに、一部の専門家は軍事作戦の透明性不足を問題視している。米政府は多くの攻撃で船籍や犠牲者の詳細を公表しておらず、現場海域も曖昧なままだ。生存者が極めて少ないことから、作戦の実態解明は困難となっている。報道によると、これまでの攻撃で生存が確認された例はごくわずかしかない。

米国は現在、中東情勢への対応で軍事負担が増しているが、中南米海域での対麻薬作戦も継続している。トランプ政権は今後も軍事的手段を維持する構えを崩しておらず、人権問題と安全保障政策の間で議論が続くとみられる。

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