エクアドルの漁師「逃げ場がない」麻薬カルテルと米軍の板挟みに
マナビ県の港町ではメキシコの麻薬カルテルと連携する犯罪組織が漁師をコカイン密輸に勧誘したり、操業を続けるための「みかじめ料」を要求したりしている。
.jpg)
南米エクアドルの太平洋岸で、漁師たちが麻薬カルテルによる脅迫と、米軍による麻薬取締りの空爆という二重の危険にさらされている。マナビ県の港町ではメキシコの麻薬カルテルと連携する犯罪組織が漁師をコカイン密輸に勧誘したり、操業を続けるための「みかじめ料」を要求したりしている。一方、沖合では米軍が「麻薬テロリスト」とみなした船舶への攻撃を続けており、密輸に関与していない漁師まで巻き込まれる懸念が強まっている。
マナビ県では麻薬組織「ロス・チョネロス」と「ロス・ロボス」という2つの犯罪組織が勢力を拡大している。両組織は米国から外国テロ組織に指定され、メキシコの麻薬カルテルともつながっている。地元警察によると、密輸への協力を拒む漁師には、1回の出漁につき1000~1200ドルの金を要求することがある。これは一般的な漁師の月収の3~4倍に相当する。逆にコカインを運べば、1回で最大4万ドルを得られるといい、貧困に苦しむ漁師にとって拒否しにくい状況が生まれている。
さらに海上では、米南方軍(U.S. Southern Command)の「オペレーション・サザン・スピア/南方の槍作戦」による麻薬船への攻撃が続く。米軍は昨年9月以降、麻薬船とされる67隻を破壊し、220人以上を殺害した。しかし、マナビ県の漁船2隻が攻撃された事例について、生存者は麻薬を運んでいなかったと証言している。3月17日に攻撃を受けた漁船の乗組員は攻撃の数時間前にエクアドル沿岸警備隊の検査を受け、麻薬は発見されなかったと説明していた。それでも無人機の攻撃を受け、乗組員は海に飛び込んだ後、軍服姿の武装した人物に拘束され、エルサルバドル海軍の艦船に引き渡されたという。
米南方軍は作戦上の理由から個別の攻撃についてコメントしていない。複数の安全保障専門家は、攻撃の場所や米軍の作戦状況などから、米国が実施した可能性が極めて高いと指摘する。エクアドルと米国は海上での麻薬取締りを強化し、大量のコカイン押収にも成功している。
しかし専門家は、漁船を攻撃するだけでは麻薬取引を止められないと警告する。コカインの大半は陸路で輸送され、貧困層から新たな協力者を補充できる犯罪組織の構造は変わらないからだ。
麻薬組織の脅迫を拒めば陸上で危険にさらされ、海へ出れば軍事攻撃の恐怖がある。漁師たちは犯罪組織と軍事作戦の双方から逃れる場所を失いつつある。
