コロンビア政府、ガルフ・クラン幹部の逮捕状と身柄引き渡し請求を停止
ガルフ・クランは旧右派民兵組織の流れをくむ麻薬カルテルで、7000人規模の戦闘員を抱える。
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コロンビア政府は8日、同国最大の悪名高い麻薬カルテル「ガルフ・クラン(クラン・デル・ゴルフォ、CDG)」の幹部29人に対する逮捕状と米国への身柄引き渡し手続きを停止すると発表した。左派のペトロ(Gustavo Petro)大統領が進める和平協議の一環で、長年続く武力紛争の終結を目指す「完全な和平」を前進させる狙いがある。
措置の対象には、組織トップのホバニス・デ・ヘスス・アビラ・ビジャディエゴ(Jovanis de Jesus Avila Villadiego)容疑者(通称チキート・マロ)も含まれる。同容疑者は麻薬密輸の罪で米国から身柄引き渡しを求められており、コロンビア政府はこれまで100万ドルの懸賞金をかけて行方を追っていた。今回の決定により、和平協議への参加を条件に、当面は拘束や国外移送が停止される。
さらに政府は、約400人の戦闘員を一時的に安全エリアへ移送する計画も承認した。それによると、ガルフ・クランを指定地域に集めることで停戦監視や武装解除への準備を進める考えだ。移送は6月25日から始まる予定で、西部チョコ県と北部コルドバ県に設けられる区域が対象となる。
ガルフ・クランは旧右派民兵組織の流れをくむ麻薬カルテルで、7000人規模の戦闘員を抱える。コカイン密輸や違法採掘、恐喝などを生業とし、コロンビア最大の麻薬組織とされる。メキシコの麻薬カルテルや欧州の犯罪組織とも結び付きが深いとされ、各地で治安悪化の要因となってきた。
ペトロ氏は2022年の就任以来、左翼ゲリラや犯罪組織との対話を通じて内戦の終結を目指してきた。コロンビアでは半世紀以上に及ぶ武力衝突で45万人以上が死亡したとされる。しかし、和平交渉は必ずしも順調ではなく、一部地域では犯罪組織による暴力や麻薬取引が依然として続いている。政府は軍事作戦と社会支援を並行して進めているものの、目立った成果は得られていない。
今回の措置に対しては賛否が分かれている。政府は「対話を進めるための必要な措置」と説明する一方、野党や被害者団体からは「犯罪組織への譲歩が過ぎる」との批判も出ている。特に米国で麻薬犯罪に問われている人物への対応については、国際協力への影響を懸念する声もある。
一方で、仲介役としてカタール、スペイン、ノルウェー、スイスが和平プロセスに参加しており、国際社会が交渉の行方を注視している。ペトロ氏の任期は残り数か月、今回の決定が和平実現への転機となるのか、それとも犯罪組織の勢力温存につながるのかが焦点となっている。
