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ハンガリー新首相が就任、長期政権に幕、親EU路線へ

マジャル氏はTISZAを率い、4月の総選挙でオルバン氏の政党フィデスに歴史的勝利を収めた。
2026年5月9日/ハンガリー、首都ブダペスト、演説するマジャル新首相(AP通信)

ハンガリーで9日、先月の議会選挙(一院制、定数199)を制した新興政党「TISZA(尊敬と自由)」のマジャル(Péter Magyar)党首が首相に就任し、オルバン(Viktor Orbán)前首相による16年に及ぶ長期政権が幕を閉じた。首都ブダペストの国会議事堂で行われた就任式には多くの市民が集まり、新政権の発足を祝った。欧州連合(EU)との対立を深め、「権威主義的」と批判されてきたオルバン政権からの転換点として、国内外の注目を集めている。

マジャル氏はTISZAを率い、4月の総選挙でオルバン氏の政党フィデスに歴史的勝利を収めた。TISZAは議会で3分の2を超える議席を獲得し、旧共産圏時代以降のハンガリー政治で最大規模の勝利となった。これにより、新政権は憲法改正を含む大規模な制度改革を進める力を手にした。

マジャル氏は45歳、かつてフィデス所属の政治家として活動していたが、2024年に離党し、オルバン政権の腐敗や権力集中を厳しく批判する立場へ転じた。国民の間では長年続いた政治腐敗や経済停滞への不満が高まっており、マジャル氏は「民主主義の回復」と「法の支配の再建」を掲げて支持を広げた。就任演説では、「私はハンガリーを支配するためではなく、祖国に奉仕するためにここにいる」と語り、歓声を浴びた。

オルバン前政権は移民排斥やメディア統制、司法機関への政治介入などを進め、EUとの関係が悪化していた。特にロシア寄りの外交姿勢やウクライナ支援への慎重姿勢は欧州各国との摩擦を生んでいた。EUは法治主義上の問題を理由に、ハンガリー向け資金約170億ユーロを凍結している。マジャル新政権はEUとの関係修復を最優先課題に掲げ、凍結資金の解除を目指す方針だ。

就任式では象徴的な変化も見られた。国会議事堂には2014年以来初めてEU旗が掲げられ、新政権の親欧州路線を印象付けた。また、新議会では女性議員が54人となり、過去最多を更新した。その多くがTISZA所属で、男性中心だった前政権との違いを鮮明にしている。

一方で、マジャル政権の前途は平坦ではない。官僚機構や司法機関にはオルバン氏に近い人材が多く残り、抵抗も予想される。経済面でもインフレや財政赤字が課題となっている。さらに、社会の分断も深刻で、オルバン氏を支持する保守層は新政権への警戒感を隠していない。

それでも、ブダペストでは「新しい時代の始まり」を歓迎する声が広がった。長年続いた強権的統治に終止符を打ち、欧州との協調を重視する新政権が、ハンガリー政治をどこまで変革できるかが今後の焦点となる。

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