コロンビア次期大統領、左翼ゲリラとの対立鮮明、特別法廷廃止へ
特別法廷は発足当初から国内世論を二分してきた。
の兵士(ロイター通信).jpg)
コロンビアで2016年の政府とコロンビア革命軍(FARC)との和平合意に基づき設置された「特別法廷(平和のための特別司法権/JEP)」が岐路に立たされている。8月に就任する右派のデラエスプリエジャ(Abelardo De La Espriella)次期大統領が特別法廷の廃止を公約に掲げたことで、戦争被害者の救済や真相究明が後退するとの懸念が広がっている。
JEPは半世紀以上に及ぶ内戦で発生した戦争犯罪や人道に対する罪を裁くため、2016年の和平合意を受けて設立された司法機関である。FARCの元戦闘員だけでなく、軍や警察関係者、民間人も審理対象となり、真実の解明や被害者への補償、再発防止を柱として活動してきた。これまでに1万4000人を超える関係者を対象に調査を進め、FARCによる誘拐事件や軍による民間人殺害事件など、長年解明されなかった重大事件の実態を明らかにしてきた。
一方で、特別法廷は発足当初から国内世論を二分してきた。保守派を中心に「加害者への処罰が軽すぎる」「元ゲリラを優遇している」との批判が根強く、デラエスプリエジャ氏も選挙戦でこれを「失敗した制度」と位置付け、廃止して通常の司法制度に戻す考えを示している。同氏は和平交渉よりも軍事力による治安回復を重視する姿勢を打ち出しており、現政権の和平政策から大きく転換する方針を掲げている。
これに対し、特別法廷はこの廃止や予算削減は被害者の権利を侵害し、コロンビアが国際社会に約束した和平合意にも反すると警告する。専門家もJEPは憲法や国際法の枠組みに支えられており、国際刑事裁判所(ICC)の監視も受けているため、新政権が一方的に廃止することは法的に容易ではないとの見方を示している。
もっとも、次期政権内には制度改革を優先すべきとの意見もある。デラエスプリエジャ氏が指名した司法相候補は、完全な廃止ではなく制度の見直しを検討する考えを示しており、新政権発足後、与野党や司法機関を巻き込んだ議論が本格化する可能性がある。一方、現職のペトロ(Gustavo Petro)大統領がはその支持を改めて表明し、必要な予算措置を講じる姿勢を示している。
和平合意から10年を迎えたコロンビアでは、左翼ゲリラや麻薬カルテルによる暴力がなお各地で続き、和解と治安回復の両立が大きな課題となっている。法廷の行方は紛争被害者の権利保障だけでなく、コロンビアの和平プロセスを左右することになりそうだ。
