米産婦人科医会、更年期症状の新指針を公表、ホルモン療法を推奨、非ホルモン治療にも選択肢

更年期は、月経が12カ月連続して停止した時点を指す。そこに至る移行期には、エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンの分泌が大きく減少し、身体や精神にさまざまな変化が生じる。
ホットフラッシュのイメージ(Getty Images)

米国産科婦人科学会(ACOG)は、更年期に伴うほてりや寝汗、睡眠障害などの症状への対処について、約12年ぶりに診療指針を改定した。新指針は、症状が中程度から重度、あるいは日常生活に支障を及ぼす場合、ホルモン療法を第1選択として位置付ける一方、ホルモン剤を使用できない女性や希望しない女性に向け、複数の非ホルモン治療も提示した。更年期症状を我慢するのではなく、医療機関で相談し、適切な治療を受ける重要性を強調している。

更年期は、月経が12カ月連続して停止した時点を指す。そこに至る移行期には、エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンの分泌が大きく減少し、身体や精神にさまざまな変化が生じる。

ACOGによると、更年期女性の半数以上が、突然体が熱くなるホットフラッシュや寝汗などの血管運動神経症状を経験する。最大3分の2は更年期に関連する睡眠障害を訴え、世界の閉経前後の女性の3分の1以上に抑うつ症状がみられるという。

従来、こうした症状は年齢に伴う自然な変化として扱われ、女性が周囲に相談せず耐えるケースも少なくなかった。しかし、ハーバード大学医学部のジョアン・マンソン(Dr. JoAnn E. Manson)教授は、症状は治療の対象であり、医療従事者に相談することが重要だと指摘する。ACOGのカミーユ・A・クレア(Camille A. Clare)博士も、女性が産婦人科医に相談し、必要な治療を積極的に求めるよう呼び掛けた。

新指針が重視するホルモン療法は、エストロゲンなどを補充し、ホットフラッシュや寝汗を軽減する治療法だ。錠剤、皮膚に貼るパッチ、スプレー、ジェル、膣リングなどがある。全身に作用する治療法は血中のホルモン濃度を高め、更年期症状を緩和する。一方、低用量の膣用エストロゲンは血液中にほとんど吸収されず、主に膣の乾燥など局所的な症状に用いられる。

ホルモン療法への警戒感は、2002年に公表された大規模研究を契機に強まった。当時、エストロゲンとプロゲスチンを組み合わせた錠剤の使用について、乳がんや血栓などのリスクが指摘され、研究は予定より早く中止された。

その後の研究では、現在用いられているホルモン療法について、多くの女性では利益がリスクを上回ることが示されたが、懸念は長く残った。米食品医薬品局(FDA)は昨年、エストロゲンやプロゲスチンを含む20種類以上の錠剤、パッチ、クリームに付されていた最も強い警告表示の撤廃を発表した。さらに今回、エストロゲンパッチ3製品の表示も改定した。

ただし、ホルモン療法がすべての女性に適しているわけではない。ACOGは年齢や病歴、個々のリスクを考慮し、医師と患者が相談して治療方針を決めるよう勧めている。適応がある場合は、60歳未満、または閉経から10年以内に開始することが望ましいとしている。

ホルモン剤を使用できない場合の選択肢として、脳の体温調節に関わる領域に作用する薬剤も紹介された。フェゾリネタントやエリンザネタントは、ホットフラッシュや寝汗の発生を抑える働きがある。また、一部の抗うつ薬も、ほてりや抑うつ症状の軽減に役立つという。薬物療法以外では、認知行動療法、マインドフルネス、運動、臨床催眠療法、鍼治療などにも一定の効果を示す証拠がある。これらは単独でも薬物療法との併用でも利用できる。

FDAが警告表示を撤廃した後、ホルモン療法への需要は高まり、一部の女性からは特定の用量や製剤のエストロゲンパッチが入手しにくいとの報告も出ている。FDAは全国的な供給不足が差し迫っているとは認識していないと説明し、製薬会社が過去1年間に生産量を倍増させたとしている。

更年期治療を巡っては、インターネット上に誤情報も広がっている。専門家は治療法の選択を自己判断だけで行わず、医師に相談するよう促している。ACOGはホルモン療法と非ホルモン療法の双方に選択肢があると強調し、更年期症状に対して「何もできない」と考える必要はないとの立場を示した。今回の指針改定は、更年期を単に耐える時期とみなす従来の認識を改め、症状に応じた医療を受けることを後押しするものとなる。

あなたへのおすすめ