米国で妊産婦を支援する「ドゥーラ」が一般化、経済的に恵まれない層も利用できるように
ドゥーラは出産前後の女性に対し、医療行為ではなく身体的・精神的な支援を行う専門職である。
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米国で出産を支援する「ドゥーラ(Doula)」と呼ばれる職種が、これまで一部の富裕層向けサービスと見なされてきた状況から脱し、広く普及しつつある。医療制度や保険の変化を背景に、経済的に恵まれない層も利用できるようになり、母子の健康改善にも寄与する存在として注目されている。
ドゥーラは出産前後の女性に対し、医療行為ではなく身体的・精神的な支援を行う専門職である。従来は費用負担の問題から利用者が限られていたが、近年は医療現場の認識が変化し、医師や看護師を補完する役割として受け入れられつつある。さらに保険適用の拡大が普及を後押ししており、幅広い層の家庭がサービスを利用できるようになった。
特に大きな転機となっているのが、公的医療保険制度であるメディケイドによる補助の拡大である。2022年には14州にとどまっていたドゥーラ費用の補償は、現在では30州以上に広がり、制度導入や検討も進んでいる。さらに民間保険大手のユナイテッドヘルスケアなども補償対象に加え始めており、制度面での整備が急速に進んでいる。
研究結果も普及を後押ししている。社会的に不利な立場の妊婦を対象とした比較研究では、ドゥーラを利用した場合、低出生体重児のリスクが大幅に低下し、出産時の合併症も減少する傾向が確認された。また別の研究では、帝王切開のリスクが約47%、早産のリスクが約29%低下し、産後健診の受診率も向上した。
こうした効果は米国で問題となっている妊産婦死亡率の高さとも関係する。特に産後のケア不足が死亡要因の多くを占め、継続的な支援を提供するドゥーラの役割が重要性を増している。現場では妊娠中から産後まで継続して寄り添い、生活面や心理面での支援を行うことで、医療の隙間を埋める存在となっている。
また、人種や所得による医療格差の是正にも寄与すると期待されている。特に黒人女性は妊産婦死亡率が高く、地域密着型のドゥーラが文化的背景を理解した支援を提供することで、医療へのアクセスや信頼関係の改善につながっている。
一方で課題も残る。ドゥーラには国家資格がなく、州ごとに要件が異なるほか、報酬水準の低さや人材不足も指摘されている。それでも医療関係者の間では、ドゥーラを医療チームの一員として組み込む動きが広がっており、制度的な整備が進めばさらなる普及が見込まれる。
かつては「贅沢」とされた出産支援が、今や公的制度や医療現場に取り込まれつつある。ドゥーラの普及は母子の健康改善だけでなく、医療のあり方そのものを問い直す動きとしても注目されている。
