ミネアポリスの警察官に殺害されたジョージ・フロイドを巡る争乱、怒り狂う抗議者たち

ミネソタ州ヘネピン郡、ミネアポリス市の警察官が非武装アフリカ系アメリカ人「ジョージ・フロイド氏」を殺害した結果、アメリカ中の都市で抗議活動が勃発。酷い地域では警察と抗議者たちが衝突、銃撃戦に発展した。

ホワイトハウスの周辺に集まった数百名の抗議者たちは、同氏の死に対する正義の執行を要求。フロイド氏の写真をプラカードに掲げ、「息ができない」と大合唱した。これは、同氏が殺される直前に発した言葉である。ミネソタ州、ニューヨーク州、カリフォルニア州でも同規模の集会が開催された。

逮捕されたミネアポリスの元警察官、「デレク・ショービン容疑者」は第三級殺人容疑および過失致死罪で起訴された。同容疑者の初公判は6月1日に行われる予定である。

トランプ大統領はフロイド氏の殺害事件を受け、「あまりに惨く、酷い事件」と表現し、同氏の家族と話したうえで、「殺害されたフロイド氏の家族は素晴らしい人ばかりだ」と述べた。

29日と30日、当局はミネアポリス周辺への立ち入りをPM8:00~AM6:00の間に限って制限した。しかし、夜間外出禁止令(法的拘束力はない)が発表されても、抗議者たちは活動を続行、暴徒と化した者たちは建物や警察車両に銃弾を撃ち込んだ。

ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴ、デンバー、ヒューストン、ルイビル、フェニックス、コロンパス、メンフィスなどでは、警察と抗議者たちが激しく衝突した。

アトランタでは、CNNのオフィス近くに抗議者たちが集結。建物やオフィスは破壊され、銃撃された警察車両が激しく炎上した。それを見た抗議者たちはさらに活動を強め、街は大混乱に陥った。またダラスでは、警察官への投石攻撃が行われ、ダラス警察は催涙弾でそれに対抗した。

容疑者は既に逮捕されているが、抗議者たちは事件に関与した他の警察官も逮捕しろと怒りの声を上げている。

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ジョージ・フロイド

ヘネピン郡の検察官、マイク・フリーマンはBBCの取材に対し、「事件に関与したとされる他の警察官3人も起訴されると予想しているが、詳細は控える」とコメントした。

また同氏は、「事件に関する証拠が提示された勢いのまま、迅速に起訴することができた。私がこれまでに経験した事件の中でも群を抜く速さである」と付け加えた。

フロイド氏の正確な死因は公表されていないが、「外傷性窒息または絞殺ではない」という誤情報が拡散され、抗議者たちの怒りに油を注いだ。

当局の報告によると、容疑者はフロイド氏の首に8分46秒間膝で強い圧力をかけたという。約3分で同氏は意識を失い、膝が首から離れたのは5分以上経ってからのことだった。

容疑者が膝を外す約2分前、他の警察官がフロイド氏の脈を調べているものの、重篤な状態に陥っているとは判断されなかった。救急車に乗せられた同氏は、ヘネピン郡医療センターに移送され、約1時間後に死亡した。

ミネソタ州警察のハンドブックによると、容疑者を拘束する際、気道に圧力をかけず拘束する訓練を受けた警察官に限り、膝を使って拘束してもよい、と記されている。つまり警察官は、”気道を圧迫せずに”容疑者を拘束しなければならないのである。ただし、容疑者が致命的な力(銃やナイフの使用)で抵抗した場合は、適用されないという。

トランプ大統領は29日の記者会見の中で、殺害されたフロイド氏が「公民権法に違反したか否か」の早急な調査を司法省に要請した、とコメントした。

また大統領は、「たくさんの人々が平和的に抗議活動を行っている。一部の暴徒や略奪者にその権利を奪われてはならない」と警告した。

フロイド氏の家族と弁護士のベンジャミン・クランプ氏は、「容疑者の逮捕を歓迎する。しかし対応が遅く、また、事件に関与した他の警察官は逮捕されていない。そして、第三級殺人容疑ではなく、より重い罪に問われる第一級殺人容疑を適用しなければならない」と述べた。

クランプ弁護士の声明はミネアポリス市およびアメリカ国民に向けて発信された。「ジョージ・フロイドは、処刑されるシーンを撮影され、その様子は全世界に拡散した。彼はなぜ公衆の面前で処刑されなければならなかったのか。ミネアポリス市はその理由を彼の子供と家族に説明しなければならない」

今回の事件を受け、バラク・オバマ前大統領は「今の世の中、2020年のアメリカで起こり得る事件ではない。あり得ないことだ。皆が理想とする最高の国で生活、成長することを望むのであれば、私たちはそうなるように努力しなければならない」とコメントした。

2016年、ミネソタ州の警察官が同州ファルコンハイツに住むフィランド・カスティーリャ氏を射殺、その様子がフェイスブックに投稿され物議を醸した。なお、起訴されたジェロニモ・ヤネズは無罪を言い渡されている。

2017年、ミネアポリス市の警察官が性的暴行の容疑をかけられていたジャスティン・ダモンド氏を射殺。モハメド・ノールには禁固5年の刑が科された。

2015年にも、逃走中だった24歳のジャマール・クラーク氏が同市の警察官に射殺されたが、正当防衛と見なされ起訴は見送られた。

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