◎ジャネット・イエレン財務長官は先週、アメリカの債務残高は10月18日までに借り入れ可能な上限(28.4兆ドル)に達すると述べた。
2021年10月6日/ワシントンD.C.ホワイトハウス、ジョー・バイデン大統領(Getty Images/AFP通信)

米主要メディアによると、共和党の指導者は債務の借入上限引き上げをめぐる民主党とのチキンレース(ゲーム)から後退したという。

ジャネット・イエレン財務長官は先週、アメリカの債務残高は10月18日までに借り入れ可能な上限(28.4兆ドル)に達すると述べた。

アメリカが債務不履行に陥る可能性はほぼゼロに等しいが、上限到達はコロナ禍で厳しい状況にある国の経済にダメージを与え、景気後退と金利の引き上げを誘発し、失業者を含む連邦政府の支援に依存している数千万人への支払いに影響をもたらす可能性があると懸念されている。

共和党は民主党にチキンレースを挑んだが、民主党は無謀と非難した。

アメリカの景気後退は世界経済に深刻な影響を与える可能性が高く、ジョー・バイデン大統領は上限の引き上げを阻止すると誓った共和党に「ロシアンルーレットをやめろ」と言い放った。

バイデン大統領は約1兆ドル(約110兆円)のインフラ法案と下院民主党が提案した約3.5兆ドル(約390兆円)のヒューマンインフラ法案で経済を立て直したいと主張しているが、共和党と一部の右寄りな民主党員は予算規模に強い懸念を表明している。

<国の総債務残高(対GDP比)ランキング:2021年4月時点>
1位 ベネズエラ 304.13%
2位 スーダン 262.52%
3位 日本 256.22%
4位 ギリシャ 213.10%
5位 エリトリア 184.70%
17位 アメリカ 127.11%

2021年10月6日/ワシントンD.C.議会議事堂、共和党のミッチ・マコーネル上院少数党首(J. Scott Applewhite/AP通信)

共和党は来年12月まで債務の借入上限を停止するという民主党の法案を阻止すると見込まれていたが、主要メディアによると、ミッチ・マコーネル上院少数党首は民主党に新たな提案を申し入れたという。

米議会は今年の12月までに借り入れの上限を停止または引き上げる必要があるため、主要メディアは「共和党の提案は12月に新たな戦いを引き起こす可能性がある」と報じた。

ドナルド・トランプ前大統領に最も危険な左翼と恐れられた自称民主社会主義者のバーニー・サンダース上院議員はソーシャルメディアに、「共和党はようやく正しい決断を下した」と投稿した。「私たちは12月まで協議し、その後恒久的な解決策(上限引き上げ)に移行するでしょう」

これに対し、共和党のマコーネル上院少数党首は「借り入れ上限の引き上げは和解を通じてのみ可決されるだろう」と述べ、下院民主党が提案した約3.5兆ドル(約390兆円)のヒューマンインフラ法案の予算見直しに応じなければ、ロシアンルーレットを再開すると示唆した。

バイデン大統領は先週、債務残高が借り入れ可能な上限に達するというイエレン財務長官の警告を受け、共和党の動きは世界の経済と金融市場を押しつぶす可能性があると警告し、上限停止を奨励するようビジネス界のリーダーに求めた。

バイデン大統領はシティグループ、JPモルガンチェース、ナスダックのCEOらと協議し、「借り入れ上限を停止しても米企業の圧倒的な信頼と経済力は負債をはるかに上回るだろう」と述べた。

シティ銀行のジェーン・フレイザーCEOはバイデン大統領との会談後、「私たちは今、火遊びをしています」と述べた。「アメリカは過去数年で最悪の苦しみを味わいました。パンデミックの人的および経済的損失は危機的なレベルに達しています。今、私たちは新たな大惨事を求めていません」

ナスダック証券取引所のアデナ・フリードマンCEOは、「金融市場にワシントンD.C.のドラマはまだ反映されていないが、株価は不安定な兆候を示している」と語った。

マコーネル上院少数党首のオファーが報じられた後、株価は上昇した。

債券による借入は財務省を通じて行われる。米国国債は世界で最も安全かつ信頼性の高い投資の1つと見なされているが、米議会は1939年に債務の借り入れに上限を設定し、厳しく管理することにした。専門家によると、上限の停止または引き上げはこれまでに100回以上行われたという。トランプ政権は3度上限を引き上げている。

上限の見直しは超党派の合意に基づいて行われることがほとんどで、対立を引き起こすことは稀だった。しかし、民主党と共和党の対立が激しくなった2000年代頃から上限の見直しはチキンゲームとして利用されるようになった。

共和党は2013年、当時のバラク・オバマ大統領の予算法案を阻止するために民主党の引き上げ要請を却下した。しかし、共和党はオバマ大統領の熱烈な交渉と債務不履行に陥る可能性があるという強い懸念を受け、要請に応じた。

ゴールドマンサックスのレポートによると、借り入れ上限が引き上げられなかった場合、財務省は国民に対する支出の40%以上を停止する必要があるかもしれないという。

国防総省は6日の声明で、軍人または退役軍人への支払いが遅れる可能性があると懸念を表明した。

国際通貨基金(IMF)は信用不安を引き起こす可能性がある「上限」を廃止するようアメリカに求めている。またIMFは、上限ではなく借り入れを管理する新たな金融メカニズムを採用する必要があると国際社会に示唆した。

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