◎2月24日の侵攻開始以来、国外に脱出したウクライナ市民は200万人を超えた。
2022年3月7日/ウクライナ、マリウポリの避難所(Evgeniy Maloletka/AP通信)

国連は8日、ウクライナ難民に対する欧州諸国の対応を評価し、他の近隣諸国にさらなる支援を要請した。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のグランディ所長は声明の中で、「欧州の対応は注目に値する」と述べ、他の国々にも協力を強く促した。

またグランディ所長は3日にEU当局が発表したウクライナ難民の保護指令について、「ウクライナから逃れた人々に安全と選択肢を提供し、激動の時代に安定を得るチャンスを与えた」と評価した。

グランディ所長はウクライナ国境付近に5日間滞在し、避難民、人道支援者、医療当局者、近隣諸国の政府高官などと会談した。

ロシアとウクライナは7日の停戦交渉で人道回廊の設置に合意したが、主要メディアやウクライナ当局によると、ロシア軍は各地で攻撃を続けているという。

米国防総省は8日、キエフに迫っているロシア軍部隊が市民の避難中に首都を3方向から取り囲む可能性があると懸念を表明した。キエフ近郊のロシア軍はウクライナ軍の抵抗を受け行き詰まっていると伝えられているが、現地の情報はほとんど明らかになっていない。

グランディ所長は近隣諸国の対応を称賛したうえで、非難を余儀なくされた人々への支援を強化し、食事や医療だけでなくメンタルヘルスもサポートする必要があると強調した。「女性や子ども、高齢者、障がいを持つ人々など、多くのウクライナ市民が国外への脱出を余儀なくされています。彼らは暴力を嘆き、深い衝撃を受け、苦難の旅を続けています...」

「家族は引き裂かれ、多くの子供が親と離れ離れになり、家族や友人を看取った人もいます。悲劇的なことに、戦争が終わらない限り、同じような境遇に置かれる人はさらに増えるでしょう...」

国連によると、2月24日の侵攻開始以来、国外に脱出したウクライナ市民は200万人を超えたという。

そのうち120万人以上が隣国のポーランドに渡った。ハンガリー、モルドバ、ルーマニア、スロバキアも受け入れている。

グランディ所長は、「UNHCRは女性や子供を含むすべての難民の人道的危機に対応する取り組みを強化している」と報告する一方、モルドバへの支援を速やかに強化する必要があると国際社会に呼びかけた。人口約260万人のモルドバは、8日時点で約25万人を受け入れている。

グランディ所長はすべての欧州諸国に寛大さを示し、欧州以外の国も支援を提供し、「何百万人もの難民に対する国際的な責任を共有する必要がある」と強調した。

ウクライナと国境を接する国以外への避難は経路の確保や手続き等の影響で遅れている。

グランディ所長は一部のコミュニティが差別されたり不当な扱いを受けたという報告に懸念を表明した。EUとウクライナ当局は難民を差別したり不当に追い返すようなことはないと断言しているが、アフリカや中東の一部の市民は暴言を吐かれ、賄賂を要求されたと報告した人もいる。

一方、ウクライナ国内の情勢は依然として不透明で、多くの市民が戦地からの脱出を試みている。

国連によると、7日の時点で確認できた死者は474人、負傷者は1,300人を超えたという。ただし、戦闘が激化している地域の調査はほとんど進んでおらず、実際の死傷者はこれよりはるかに多いと考えられている。

2022年3月6日/ウクライナ、首都キエフ郊外の町イルピン(Diego Herrera Carcedo/AP通信)

国連のドゥジャリック報道官は8日、第二の都市ハリコフ、マリウポリ、チュヒフ、イジュム、チェルニヒフ、スミ、ドネツクなど、主に東部と北東部で激しい戦闘が続いていると国連チームから報告を受けたと明らかにした。

北部のブチャ、ホストメル、イルピンなど首都キエフの郊外でも激しい戦闘が報告されている。

ドゥジャリック報道官は、「これらの地域に閉じ込められた人々は物資を入手することができない」と懸念を表明し、即時の停戦と人道回廊の設置を呼びかけた。

国連を含む人道機関は主に東部と西部で活動している。

赤十字国際委員会は20万点以上の医療品を東西の移動診療所に、国境なき医師団(MSF)も支援物資を提供し、負傷者の保護にあたっている。

国際移住機関(IOM)はこれまでに1万8,000枚以上の保温性の高い毛布を、UNHCRは6,000人分の保温毛布とマットレスを提供した。

また、近隣諸国の人道機関、NPO、ボランティアなどが最も避難者の多いポーランドの国境付近に設置された調整センターに集まり、様々な支援を提供している。

一方、国際原子力機関(IAEA)は最新の声明で、チェルノブイリ原子力発電所本体とそこに閉じ込められている職員が直面している「ストレス」に懸念を表明した。

IAEAによると、2週間前の占領以来、約200人の技術者と警備員がロシア軍の支配下で働いているという。

IAEAのグロッシ事務局長は声明の中で、「ウクライナの規制当局から当直業務にあたっている職員を交代させる必要があると連絡を受けた」と明らかにした。

グロッシ事務局長は「原子力発電所の職員に休みを与え、規則正しいシフトに戻す必要がある」と強調し、チェルノブイリ原発や他の原子力関連施設を訪問する準備はできていると改めて表明した。

2022年3月7日/ウクライナ、西部リヴィウの避難所(Bernat Armangue/AP通信)
スポンサーリンク