◎マリウポリが陥落すれば、クリミアと分離主義国家を結ぶ陸上回廊が完成し、ウクライナはさらに多くの領土を失うことになる。
防衛省・自衛隊/ロシアによるウクライナ侵略の状況(2022年4月6日時点)

南東部の要衝マリウポリの市長は6日、子供210人を含む民間人5,000人以上がロシア軍に殺害されたと明らかにした。

ロシアは2014年に併合したクリミア半島と東部ドンバスの分離主義国家(ルガンスクとドネツク)の中間に位置するマリウポリを制圧し、アゾフ海に面する地域一帯を支配下に置きたいと考えている。

ウクライナ軍をこれを阻止しマリウポリを含む東部地域の住民をひとりでも多く救うため、最終決戦に備えている。

ゼレンスキー大統領は6日遅くのビデオ演説で、「ロシア軍は東部での新たな攻撃に備え、兵力を増強し続けている」と警告した。またゼレンスキー大統領は、ロシアはドンバスの解放を目指していると述べる一方、ウクライナ軍も戦いに備えていると強調した。

「我々は戦うし、退却もしない。ロシアが真剣に平和を求めるまで、自衛のためにあらゆる可能な選択肢を模索する。これは我々の土地だ。私たちの未来だ。そして、我々はそれらをあきらめない」

ウクライナ当局はドンバスの住民に避難を呼びかけている。

AP通信などによると、米国防省は、「ロシアは首都キーウ周辺から推定2万4000人以上の部隊の撤退させ、その多くが同盟国ベラルーシなどで補給と再編を行い、恐らく東部戦線に配備される」という見方を示した。

一方、イギリスの政府関係者は、傷ついたロシア兵を再編し、東部戦線に送り込むためには少なくとも1カ月はかかるという見方を示している。

ロシアに補給と再編に時間をかける余裕はない。

西側諸国はロシアに戦争犯罪者の烙印を押し、新たな制裁の準備を開始している。米国は6日、プーチン大統領の2人の娘を含む複数の政府関係者、銀行、企業に制裁を科し、すべての米国民のロシアへの新規投資を禁止すると発表した。

ロシアはルーブル建て国債の処理に苦労しており、米国は新たな制裁でロシアが米国内の銀行に保有している米ドルで国債を処理できないようにし、デフォルトを後押しした。

南東部地域に展開しているロシア軍はマリウポリやその他の町への攻勢を強めていると伝えられているが、最前線の状況はほとんど明らかになっていない。

マリウポリの市長は子供210人を含む民間人5,000人以上が殺害され、さらに、ロシア軍は病院を爆撃し少なくとも50人を焼き殺したと報告した。

市長によると、市内のインフラの90%以上が破壊され、食料、水、燃料、医薬品、あらゆる物資が不足しているという。

英国防当局は、マリウポリの住民43万人のうち、少なくとも16万人が避難できずにいるという見方を示している。赤十字社が率いる救援部隊は数日前から現地に入ろうと試みているが、ロシア軍の攻撃は止まず、成功していない。

マリウポリが陥落すれば、クリミアと分離主義国家を結ぶ陸上回廊が完成し、ウクライナはさらに多くの領土を失うことになる。

プーチン大統領は開戦直前にルガンスク人民共和国とドネツク人民共和国の独立を公式に承認したが、他の国連加盟国はこれを認めておらず、西側は2つをテロリスト国家と見なしている。

首都キーウ郊外のブチャでは民間人少なくとも410人の遺体が収容された。ゼレンスキー大統領は民間人の大量虐殺を「ロシアの殺人、レイプ、身体切断、拷問」と非難し、国際社会に対ロシア制裁の強化を呼びかけている。

報道によると、一部の犠牲者は両手を固縛され、至近距離から頭部を撃ち抜かれていた。BBCニュースは射殺され、火をつけられ、黒焦げになった非武装の夫婦の遺体を報じた。

ゼレンスキー大統領は5日の演説で、ロシア軍はブチャの遺体を運び出し、証拠隠滅を図り、国際機関の調査を妨害しようとしている非難した。ロシア軍はキーウ郊外の各地に遺体を埋めたもしくは遺棄したと考えられているため、犠牲者はさらに増える可能性がある。

ゼレンスキー大統領は演説の途中でロシア語に切り替え、ロシア国民に「プーチンに立ち向かってほしい」と呼びかけた。「ロシア軍がウクライナでやっていることを恥ずかしいと思うなら、戦争の終結を要求するよう呼びかけてほしい」

一方、米上院は6日、ロシアとの貿易関係の見直しと、ロシア産石油の禁輸措置に関する大統領令を成文化する法案を審議する予定である。法案が成立すると、バイデン大統領はロシアの特定の輸入品に高い関税をかけることができるようになる。

EUも石炭の禁輸を含むさらなる制裁を科す予定である。

ロシア外務省は6日、ブチャの民間人虐殺にロシア兵が関与したという西側の主張を一蹴し、「ブチャの映像は停戦協定をとん挫させるウクライナの演出」と非難した。

プーチン大統領も同様の見解を示している。

AP通信などによると、ブチャの収容作業は6日も続き、まだ多くの遺体が収容されておらず、集団墓地はほかにもある可能性が高いという。ウクライナ兵は遺体の捜索と収容だけでなく、ロシア軍が撤退時に残した地雷や不発弾の処理も進めている。

墓地の作業員たちは数十体の遺体を食料運送用のトラックに積み込み、戦争犯罪でロシアを告発する証拠を得るために、遺体を政府の専用施設に運んだ。

2022年4月3日/ウクライナ、首都キエフ郊外のブチャ(Rodrigo Abd/AP通信)
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