◎西側のSNSユーザーはロシア国防省の発表に微妙な反応を示している。
2022年4月3日/ウクライナ、首都キーウ郊外のブチャ、ロシア軍に殺されたとみられる民間人の遺体(Vadim Ghird/AP通信)

ロシア国防省は18日、ウクライナ軍が投降したロシア兵10人超を処刑したと主張した。

同省はウクライナ東部ルハンシク州で撮影されたとされる動画が証拠と主張している。

ロシア人権理事会も捕虜虐殺を非難し、関係機関に調査を要請したようだ。この動画はロシアのソーシャルメディアで拡散し、ルハンシク州の村マキイフカで撮影されたという。

ウクライナ政府はこの主張に関する声明を出していない。

ソーシャルメディアの情報によると、動画は今月12日に撮影されたとみられる。

撮影にはドローンが使用され、農場と思われる場所に横たわる兵士の遺体が映っている。

この動画の一部はウクライナ国防省がマキイフカの軍事作戦について説明したオンライン動画と酷似している。

この動画を撮影したと主張する親ロシア派は「ウクライナ軍第80空挺突撃旅団が投降兵を処刑した」と主張している。

西側のSNSユーザーはロシア国防省の発表に微妙な反応を示している。
▽なぜウクライナ兵はロシアドローンの撮影を許可したのか?
▽映像を撮影したと主張するロシア兵はなぜ無事なのか?
▽ロシアの偽旗作戦ではないのか?

しかし、ロシアはウクライナ軍がやったと主張し、関係機関に調査を要請している。

地上で撮影された映像も流出した。ある兵士がウクライナ語で小屋の中に隠れている兵士に投稿するよう呼びかける。

軍服を着た男たちは呼びかけに応じ、1人ずつ小屋から出てくる。

兵士がウクライナ語で、「これで全員か?」と問う。

映像の中に登場する捕虜はウクライナ語を話しているが、服はウクライナではなくロシア軍のもののようだ。

ロシア国防省と国営メディアは「捕虜はロシア人だ」と主張している。

その後、黒っぽい服を着た男が現れる。男は武装しており、何かに向け発砲しているように見える。

この男がロシア人なのかウクライナ人なのか、そして、何を撃ったかは分からない。

さらに銃声が鳴り響き、カメラが遠ざかっていく。映像がぼやけ、途切れる。

2つの映像は同じ場所で撮影されたように見えなくもない。

映像には玄関の扉と、赤いおもちゃの車のようなものが映っている。

ロシア国防省によると、ウクライナ兵は投降しうつぶせ状態のロシア兵10人以上の頭部に銃弾を撃ち込んだという。

また同省はこれをウクライナ軍による戦争犯罪の証拠と主張している。

投降した兵士の殺傷は戦争犯罪である。

ロシアは首都キーウ郊外のブチャなどで数千件の戦争犯罪を行ったと告発され、ウクライナ検察と西側の同盟国による捜査が進められている。

ウクライナとロシアは投降した捕虜を積極的に交換している。

ウクライナの国連ミッションは今週の報告書で、「双方が捕虜を虐待している」と報告した。それによると、解放されたウクライナ人捕虜の大半が拷問を受け、少なくとも9人が殺害されたという。

ロシアは解放された捕虜の聞き取り調査を認めていない。国連ミッションはウクライナ捕虜の証言を引用し、「何人かは即座に処刑され、拷問を受けたケースもいくつかある」としている。

先週末にはロシアの民間軍事企業ワグネルの傭兵がウクライナ軍に投稿した傭兵を処刑する動画が拡散した。

その映像には、男性がハンマーで頭をたたき割られるところが映っていた。ワグネルの創設者プリゴジン(Yevgeny Prigozhin)氏はこの動画に言及し、「犬(裏切り者)は犬らしい死を迎えるべき」と主張した。

この男性はウクライナの裁判所で有罪判決を受け、その後、ウクライナメディアの取材に応じ、寝返ったと主張していた。

男性がロシアの手に渡った経緯は明らかにされていない。ウクライナ当局は「この男は自発的に投降しておらず、捕虜交換の対象にはならない」と主張している。

ウクライナとロシアは今月11日に捕虜交換を行ったが、報道によると、その中にこの男性は含まれていなかったという。

AP通信は当局者の話を引用し、「ロシアの工作員がキーウで男を拉致した可能性がある」と報じている。

2022年4月3日/ウクライナ、首都キーウ郊外のブチャ(Vadim Ghird/AP通信)
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