◎ドーバー海峡は不法入国者のホットスポットとして知られている。
2022年4月13日/イギリス、ケント州のドーバー海峡、移民と見られる人々を移送する当局者(Gareth Fuller/PAメディア)

イギリス政府は14日、亡命希望者を6,000km離れたルワンダに送るという物議を醸す計画を発表し、人権団体の非難に直面した。

ジョンソン首相はドーバー海峡に面するケント州で演説し、「今年の初めからイギリスに不法入国した個人は中央東アフリカのルワンダに移住することになるかもしれない」と述べた。「私たちの思いやりは無限ですが、人々を助ける能力は無限ではありません」

ドーバー海峡は不法入国者のホットスポットとして知られている。

ジョンソン首相は、「何千人もの難民がこの計画に基づき、ルワンダに輸送される可能性がある」と述べる一方、「計画は無数の命を救うことになり、人間の密輸入を取り締まるだろう」と強調した。

しかし、主要な人権団体は計画を却下し、「亡命希望者を商品のようにルワンダに輸出すべきではない」と一蹴した。

難民組織も「残酷」「非人道的」「新植民地的」な計画と非難し、公費で助けを求めている人々を積極的に国外追放するなど言語道断と糾弾した。

人権NGOアムネスティ・インターナショナルUKの代表はアルジャジーラのインタビューの中で、「本当に衝撃的で非人道的だ」と憤慨した様子で語った。「この計画で難民の数を減らすことはできません。この計画は難民の数を減らすのではなく、難民を残酷に痛めつけ、より危険な亡命ルートの誕生を後押しすることになります」

計画によると、イギリス政府は庇護希望者を選別し、ルワンダに移送する前にルワンダ当局に個人情報を提供する。ルワンダ政府は亡命手続きを行い、承認されれば庇護希望者はルワンダに定住できる。

計画の詳細はまだ明らかにされていないが、イギリスに不法入国した「難民」はルワンダに送られることになる。

なお、ルワンダ政府の亡命手続きを通過できなかった者は出身国または居住する権利を有する別の国に強制送還される可能性がある。

内戦、紛争、拷問からイギリスに逃れた難民は国際協定に基づき、難民としての地位を主張する権利を持っている。

計画が実行されれば、シリア、アフガニスタン、エリトリア、スーダンなどの紛争地から逃れた不法入国者は亡命申請を出す前にルワンダに移送される可能性が高く、イギリスは亡命申請の数を減らすことができる。

計画は現在、議会で検討中である。

BBCニュースによると、計画は有効なビザを持たずに入国した難民を取り締まる法案が可決された後に成立する予定。この法案は賛成多数で可決される見込みである。

ジョンソン首相は演説の中で、「長年にわたり、不法入国者の国外退去に反対してきた団体が存在する」と述べ、計画が法廷で争われる可能性があることを認識していると示唆した。

国連を通じて安全なルートで再定住を許可される難民は世界の1%未満に過ぎない。

不法入国後に拘束された難民を支援するNGO「ディテンション・アクション」の代表はアルジャジーラに、「亡命を希望する99%以上が不法入国を余儀なくされている」と訴えた。「亡命申請の手続きには時間がかかります。また、助けを求めている紛争地の希望者の大半は自国で手続きを受けることができず、越境を余儀なくされているのです」

国連の難民機関も反対の声を上げた。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の担当官はSNSに、「戦争や紛争、迫害から逃れた人々は思いやりと共感を得るに値する」と投稿した。「彼らを商品のように扱うべきではありません」

2022年4月14日/ルワンダ、首都キガリの政府庁舎、英内相とルワンダ外相(Muhizi Olivier/AP通信)

ルワンダの外相は14日、英内相との共同記者会見で、「ルワンダは難民に尊厳ある生活、シェルター、ルワンダの生活に必要なスキル、必要に応じて自国に戻るための措置を提供する予定である」と語った。

ジョンソン首相は演説の中で、「イギリスの国境管理を取り戻す」「中東やアフリカ諸国からイギリスに不法入国する独身男性を取り締まる」など、2016年の選挙戦で使った言葉を何度か使用した。

しかし、不法入国者を減らすというジョンソン首相の公約にもかかわらず、近年、ドーバー海岸を横断する亡命希望者の数は急増している。

昨年、欧州からイギリスに小型船で渡った移民・難民は2万8000人以上と推定され、2020年の3倍以上に増加した。

昨年11月には小型船がドーバー海峡の荒波に飲まれ、27人が溺死するという過去最悪の遭難事故が発生した。

世論調査会社イプソスが最近行った世論調査によると、英国民の6割が政府の移民政策に不満を持っている。

一方、政府はロシアの侵攻から逃れたウクライナ難民55,000人以上にビザを発給した。

難民の権利保護を求める団体の代表ゾーイ・ガードナー氏はアルジャジーラのインタビューの中で、「扱いがあまりにも違い過ぎる」と批判した。「私たちは戦地から逃れてきた人々の権利を保障し、尊厳と尊敬をもって扱ってほしいと訴えています。ウクライナに対する英国民の反応はそれを明確に示しています」

「しかし、ウクライナ難民は積極的に保護する一方、内戦や紛争から逃れ、絶望的な数千キロの旅を終えた有色人種はルワンダに強制送還されようとしています」

亡命希望者の「選別」を行っている国はイギリスだけでない。

オーストラリアは不法入国者を太平洋諸島の収容センターに収容している。この政策は、基準以下の環境で激しい虐待や非人道的な扱いを受けた数百人の亡命希望者に「計り知れない苦しみ」を与え、自殺に追い込もうとしていると厳しく非難されてきた。

イスラエルは2013年にルワンダとウガンダと密約を結び、スーダンやエリトリアの庇護希望者を移送している。この取り決めは、ルワンダで何の保護も受けられなかった難民たちが欧州への危険な旅に出たことで事実上破綻し、オックスフォード大学の研究により2018年に明らかにされた。

デンマーク議会も昨年6月、EU、国連、権利団体から広く批判されながらも、欧州外の第三国に庇護希望者の移送を認める法案を可決した。

ジョンソン首相は「この計画が亡命希望者を扱う新しい国際基準になる」と述べた。

しかし、アムネスティ・インターナショナルUKの代表はこう警告した。「亡命希望者は他の西側諸国への危険な旅を模索することになるでしょう」

2021年11月17日/フランス、カレー近くの海岸(Louis Witter/AP通信)
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