スペイン警察が与党本部を家宅捜索、サンチェス首相への圧力高まる
捜査の焦点となっているのは、党関係者による司法介入疑惑である。
の本部前(AP通信).jpg)
スペインの与党・社会労働党(PSOE)の本部が警察の捜索を受け、サンチェス(Pedro Sánchez)首相に対する政治的圧力が一段と強まっている。捜索は27日、首都マドリードにある党本部で実施され、汚職疑惑に関連する資料や電子データが押収された。現職首相が率いる与党本部に警察が入るのは極めて異例であり、スペイン政界に大きな衝撃を与えている。今回の問題は、サンチェス政権の信頼性そのものを揺るがしかねない状況となっている。
捜査の焦点となっているのは、党関係者による司法介入疑惑である。司法当局によると、複数の元党幹部らが警察や検察に圧力をかけ、自党に不利な捜査情報を操作しようとした可能性があるという。当局は司法制度を妨害するための組織的ネットワークが存在したかどうかを調べており、贈賄や公文書偽造、職権乱用など複数の容疑を視野に入れている。今回の捜索では、党内の通信記録や電子メールなどが重点的に調べられた。
サンチェス氏は現時点で捜査対象ではない。しかし、政権周辺ではこの数カ月、不祥事が相次いでいる。サンチェス氏の妻であるゴメス(Begoña Gómez)夫人は大学関連事業をめぐる利益誘導疑惑などで司法調査を受けている。また、首相の弟についても公的ポストを利用した不正疑惑が取り沙汰されている。さらに、元運輸相ら党幹部経験者は新型コロナ対策時の医療物資契約をめぐるキックバック事件への関与が疑われている。
野党は今回の捜索を受けて一斉に政権批判を強めた。最大野党・国民党(PP)の党首は、「政府は国民の信頼を完全に失った」と述べ、解散総選挙を要求した。極右政党ボックス(VOX)も「サンチェス政権は腐っている」と非難し、辞任を求めている。これに対しサンチェス氏は記者団に対し、「司法の独立を尊重し、捜査に全面的に協力する」と強調したうえで、「違法行為が確認されれば厳正に対処する」と述べた。
サンチェス氏は2018年、当時の保守政権が汚職問題で追及された際、不信任決議を主導して政権交代を実現した。そのため、今回の疑惑は「汚職一掃」を掲げてきた政権理念との矛盾を指摘されている。一方で、スペイン経済は観光回復や雇用改善を背景に比較的堅調を維持しており、政権支持層には「野党や司法による政治的攻撃だ」との見方もある。
しかし、連立政権内でも不安が広がっている。少数与党であるサンチェス政権は地域政党や左派勢力の協力によって政権を維持しているため、支持基盤は必ずしも安定していない。今回の党本部捜索によって、政権運営はさらに困難になる可能性が高まっている。スペイン政界は今後、司法捜査の進展次第で大きく揺れることになりそうだ。
