◎ラデフ大統領は11月18日に行われた大統領選討論会の中で、「クリミア半島を取り戻すために科された制裁は機能していない」と述べた。
2021年11月21日/ブルガリア、首都ソフィアの教会、ルメン・ラデフ大統領(Getty Images/AFP通信/EPA通信)

11月22日、米国はウクライナのクリミア半島に関するブルガリアの発言に懸念を表明し、ルメン・ラデフ大統領を批判した。ラデフ大統領は21日の大統領選決選投票で野党候補に大差をつけ、再選を決めた。

ブルガリアの米国大使館は22日、ラデフ大統領の発言に対して深刻な懸念を表明すると発表した。

ロシアは2014年にウクライナの領土であるクリミア半島を併合し、クリミアを「自国の領土」と宣言したが、国際社会はこれを認めていない。

その後、クリミアの北東部に位置するドネツクとルハンシクの分離主義者はウクライナからの独立を宣言した。ロシアは「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認したが、国際社会とウクライナは分離主義者をテロリストと見なしている。

ウクライナ東部で進行中のドンバス戦争は2015年の停戦協定ミンスクⅡの締結以来、大きな戦闘は報告されていないが、小競り合いは続いている。当局によると、2020年のウクライナ軍の死亡者は50人、2021年第1四半期の死亡者は25人。

ラデフ大統領は18日に行われた大統領選討論会の中で、「EUはロシアとのさらなる対話を模索し、問題の解決にあたる必要がある」と述べた。

ラデフ大統領は野党候補のアナスタス・ゲルジコフ氏と聴衆に、「クリミア半島を取り戻すために科された制裁は機能していない」と説明した。「クリミア半島はロシア人のものになりました。他に何ができますか?」

ウクライナ政府はこの発言に反応し、ラデフ大統領に抗議した。

米国大使館は声明の中で、「米国、G7、EU、NATOはロシアの併合を却下し、クリミアはウクライナの領土であるという立場で団結している」と述べた。「ブルガリアを含むこれらの国家は今年のNATOサミットでウクライナの立場を再確認し、ロシアの違法な併合を容認せず、クリミアを取り戻すための努力を継続すると宣言しました...」

これに対し、ブルガリアの報道官は22日、「クリミア併合は国際法に違反している」と強調したうえで、ラデフ大統領の発言を擁護した。「ラデフ大統領が討論会で述べた通り、現在のクリミアはロシア人に支配されています。そして、ロシアに対する制裁で問題が解決できていないことも事実です...」

報道官は声明の中で、「ラデフ大統領はウクライナ周辺で進行中の問題を懸念している」と述べた。ロシアはウクライナ国境近くの兵力を90,000人規模に増強したと伝えられている。

旧ソ連の衛星国であるブルガリアはNATOとEUに加盟にしているが、多くのブルガリア人がロシアの文化と歴史に親和性を感じている。またブルガリアはロシアの天然資源に大きく依存しており、NATOとロシアの対立に頭を悩ませてきた。

ブルガリアの選挙管理委員会によると、決選投票の結果、ラデフ大統領は有効票の66%を獲得し再選を決めたという。野党候補のゲルジコフ氏は敗北を認め、大統領を祝福した。

<ブルガリア2021大統領選 決選投票 開票率100%>
・ルメン・ラデフ 1,539,650票(66.72%)
・アナスタス・ゲルジコフ 733,791票(31.80%)
・無効 34,169票(1.48%)

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