◎欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長と保守的なポーランド政府を率いるマテウシュ・モラヴィエツキ首相は欧州議会で激論を交わした。
2021年10月19日/フランス、ストラスブールの欧州議会、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長(左)とポーランドのマテウシュ・モラヴィエツキ首相(右)(Ronald Wittek/Pool/AP通信)

10月19日、EUの最高責任者はEU法の優位性に異議を唱えたポーランドに強い懸念を表明し、EUの共通の価値観を危険にさらすことは許されないと警告した。

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長と保守的なポーランド政府を率いるマテウシュ・モラヴィエツキ首相は欧州議会で激論を交わした。

ポーランドの憲法裁判所は今月7日、ポーランドの憲法はEU法より優先されると裁定し、EU法優位の原則を否定した。この判決に欧州委員会は強い懸念を表明し、EU法の完全性を確立するためにあらゆることをすると誓った。

フォン・デア・ライエン委員長は、EUの共通の価値観を危険にさらすことは許されず、「欧州委員会は行動するだろう」とモラヴィエツキ首相に警告した。

モラヴィエツキ首相はフォン・デア・ライエン委員長の「脅迫」を却下し、EUは加盟国に対する権限を「踏み越えた」と非難した。

ポレグジット(ブレグジットの造語)危機は21日から始まるEUサミットの主要議題になる予定で、モラヴィエツキ首相はEUのジャガーノートであるドイツとフランスの激しい圧力にさらされると予想されている。

フォン・デア・ライエン委員長は議会議長にこの問題を注意深く関していると述べ、「ポーランドの憲法裁判所の判決はEU法とEUの法定秩序への挑戦である」と述べた。

またフォン・デア・ライエン委員長は、保守的なポーランドに対する行動を起こすと誓い、3つの対策を発表した。それによると、EUはポーランドの憲法裁判所に異議を唱え、ポーランドに対するEU予算を差し控え、EU加盟国に与えられる権限を一時停止するという。

欧州委員会はポーランドに割り当てられたコロナウイルス回復予算570億ユーロ(約7.6兆円)をまだ承認しておらず、紛争が解決するまで承認しない可能性がある。

モラヴィエツキ首相は割り当てられた時間を超える熱烈な演説で、「ポーランドはEUの指導者から攻撃されている」と訴えた。「指導者の立場を利用した脅迫は、いかなる理由があろうと許されません」

フォン・デア・ライエン委員長はポレグジットの懸念を払拭するよう圧力をかけられており、難しいかじ取りを迫られている。

一方、EU加盟国の意見は分かれている。

ルクセンブルクのジャン・アッセルボルン外相は、衝突はEUの存在を脅かしていると述べ、ドイツのマイケル・ロス欧州問題大臣は、EU法優位の原則はEUの根幹であり妥協してはならないと述べた。

しかし、リトアニアのギタナス・ナウセダ大統領は、法の支配に関する問題と予算を結びつけることはEU全体に深刻な影響を与えるリスクがあると警告した。ナウセダ大統領はポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領との首脳会談後、調停を申し出た。

ポーランドの地元メディアが最近行った世論調査によると、回答者の約8割が2004年のEU加盟を支持したという。モラヴィエツキ首相もEUから離脱する計画はないと繰り返し主張している。

しかし、与党「法と正義の統治党(PiS)」の一部の議員は離脱を促す発言を繰り返しており、懸念が高まっている。

10月10日に首都ワルシャワで開催されたEU残留を支持するデモには10万人以上が参加し、ポレグジットを示唆する議員を非難した。デモを主催した野党指導者のドナルド・トゥスク議員はさらなる平和的なデモを呼びかけ、国民に民意を示すよう促している。

2021年10月10日/ポーランド、首都ワルシャワの広場、EU残留を支持する抗議デモ(Czarek Sokolowski/AP通信)
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