現職の保守系、ドゥダ大統領が優勢か

7月12日、ポーランド国民は二人の大統領候補から一人を選ぶ。そして、その結果次第で、国の将来およびEUとの緊張関係がどうなるか、決まる。

現職のアンジェイ・ドゥダ大統領が再選した場合、保守的な政策、司法を含む独立機関を政府が一元管理する独裁体制および、狭量(心の狭い)な国家が2025年まで継続されることになる。

中央右派の元ワルシャワ市長、ラファウ・トゥジャスコフスキ氏が勝利した場合、LGBTなどの少数派を駆逐し、司法を政府に属従させ、かつ、民主的な価値観を破壊する現政権および議会の企てを阻止すべく、大統領にのみ与えられた「拒否権」を発動する、と伝えられている。

専門家は、「トゥジャスコフスキ氏は議会と可能な限り協力し、最大限努力するだろう」と述べた。ただし、現職のドゥダ氏が敗れるようなことになれば、議会は恐らく二分される。

48歳のドゥダ氏は、非常に優秀な弁護士である。2015年、ヤロスワフ・カチンスキ元首相のサポートを受け、当時現職のブロニスワフ・マリア・コモロフスキ氏との決選投票を制した。この勝利により、「法と正義党(PIS)」は支持率を引き上げ、政権は盤石なものとなったのである。

ドゥダ氏は敬虔かつ保守的なカトリック信者であり、「伝統的な家族モデル」を擁護したいと主張している。敬虔かつ保守的なカトリック信者曰わく、「結婚とは男性と女性が行うものであり、男性と男性、女性と女性の組み合わせは間違い、あり得ない」とのこと。

一方、500年以上続いた圧政を消し去り、不幸な歴史を上書きした寛大な福祉制度へのサポートも忘れてはいない。ポーランド国民の大半は、1989年の共産主義体制終結後に始まった福祉制度により、苦しい生活と貧困から解放された。すなわち、同制度こそが「ポーランドの根幹をなす」と言っても過言ではないのである。

福祉制度の充実を図る、という主張は、保守的な小さな村や町で効果を発揮し、第一ラウンドでの票獲得につながった。

ドゥダ氏は、ポーランドの健全かつ健康的な男女を間違った性的指向に走らせる輸入物の「LGBTイデオロギー」から守る、と誓約している。

現在、ポーランドの州立学校で性に関する教育を行うクラスは存在せず、「LGBTや同性愛者は異端、許しがたい」という考えが常識になっている。その代わりに、カトリック要素の強い「家庭生活教育クラス」が設置され、司祭や修道女による、保守的&保守的&保守的な教育が行われている。

ドゥダ氏は、大きな力を持ち、かつ、公平で平等な活動が必要不可欠とされる独立機関(司法、公共メディアなど)の政府一元管理法を支持している。

ポーランドの公共放送局である「ポーランドTV」は、国民の税金で運営されている。当然、現政権には一切加担しない独立機関であり、政治関連の報道が保守派に偏ることなどない。

しかし、なぜかポーランドTVの主要な番組およびニュースは、連日ドゥダ氏は称賛し、LGBTや同性愛者の権利を認めるべきと主張するトゥジャスコフスキ氏を激しく罵倒し続けている。

また、EUなどの国際機関の誕生により、自国の独立性および司法の力が大幅に弱まったと主張。政府(立法)による独立機関への介入は当然、とする立場を明確にしている。結果、EUとの関係は著しく悪化した。なお、ドゥダ氏はEUのことを、「何の利益ももたらさない役立たずの仲良しクラブ」と呼んでいる。

ポーランドはEU予算の最大受益国であり、2014年~2020年の間に1,100億ユーロ(約13.3兆円)以上の補助を受けている。

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決戦投票

48歳のラファウ・トゥジャスコフスキ氏は、2007年~2015年の間、ポーランド中央市民党党首を務めた。また、欧州理事会の前議長も務め、ドナルドパワー(トランプ大統領)に同会が支配されるまでの間、素晴らしいパフォーマンスを発揮したことで知られる。

2週間前に実施された第一ラウンドにおいて、トゥジャスコフスキ氏は30.46%の支持を獲得。現職(43.5%)に次ぐ2位となり、決戦投票の挑戦権を得た。なお、市長として手腕を振るったワルシャワ地区では同氏が勝利を収めている、

トゥジャスコフスキ氏は所得の不平等を解消し、より多くの人が経済的自由を得るべきと主張。法と正義党(PIS)と同じく、共産主義体制終結後に確立された福祉制度のさらなる充実および、問題のある点については随時見直しを行うべきと述べている。

また、世界中に拡散した「Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター)」などに代表される差別、不平等解消を支持。少数派や特定の人種に対する卑劣ないじめを否定し、LGBTや同性愛者などに対する誤った考え、偏見を無くすプログラムを教育機関に導入すると提案した。

しかし、トゥジャスコフスキ氏は同姓カップルの養子縁組には反対の立場をとっている。調査機関の報告によると、ほとんどのポーランド人が同姓カップルの養子縁組に反対しているという。

トゥジャスコフスキ氏がドゥダ氏を破った場合、大統領にのみ与えられる「拒否権」が力を発揮する。しかし、議会とのねじれ(第一党はPIS)状態が続く以上、拒否権ばかり発動するわけにもいかない。大統領が支持する法案に対し、PISは反対の立場をとる。これでは法案を通すことなどできないだろう。

トゥジャスコフスキ氏当選によるねじれは、恐らく防げない。つまり、政治を安定させるためには、同氏のもつ民主的かつ平和的な考えを議会に浸透させ、支持を得なければならないのだ。

トゥジャスコフスキ氏は、政府が独立機関を一元管理する法案に否定的な立場をとっている。また、現政権が地方政府の権限を剥奪しようとしていることについて、「現状を放置すれば、ポーランドの民主主義は崩壊する」と警告した。

現ポーランド司法の最高権限者は、法務大臣および検察総長である。これが覆された時、司法権の独立は失われ、大統領や政府に忖度する判決が下されることになるだろう。

EUとの関係修復についても、トゥジャスコフスキ氏は前向きかつ慎重に対応すべきと述べている。なお、ポーランドとEUの関係を劇的に悪化させた司法への政治介入を阻止できれば、関係修復は容易、と関係者は考えている。

ポーランドはEUの補助を受け、共に発展してきた。トゥジャスコフスキ氏は記者団に対し、「現政権の誤った政策がEUとの関係をこじらせ、他の加盟国からも反感を買うことになった。保守的かつ独裁的な思想が継続されると、ポーランドのEU脱退もあり得る」と語った。

ポーランドの運命を決める決戦投票は7月12日実施、即日開票される。

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