◎製薬企業ババリアン・ノルディック社製の天然痘ワクチンは欧州では「Imvanex」、米国では「Jynneos」として販売されている。
天然痘ワクチン(Getty-Images)

欧州医薬品庁(EMA)は28日、欧州でサル痘が大流行する可能性を考慮し、製薬企業ババリアン・ノルディック社製の天然痘ワクチンをサル痘用として認可するかどうかの審査を開始すると発表した。

同社の天然痘ワクチンは欧州では「Imvanex」、米国では「Jynneos」として販売されている。米国の規制当局は28日、このワクチンについて、すでにサル痘用として使用していると声明を出した。

EMAはこのワクチンの接種対象を成人以上としている。

EMAは声明の中で、「この決定はImvanexがサル痘ウイルスの抗体を作ると示唆する試験結果に基づいている」と述べている。EMAによると、欧州のImvanex供給量は非常に限られているという。

サル痘は中央・西アフリカでよくみられる感染症のひとつで、1970年にコンゴ民主共和国で初めて検出された。

医療専門家によると、この感染症の重症化リスクは低く、感染者の大半は数週間で回復するという。死亡率は5~10%程度。

米疾病予防管理センター(CDC)によると、世界のサル痘感染者は27日時点で4300人を超え、その大半が欧州で報告されたという。

イギリス、ドイツ、米国などでは、サル痘に感染する可能性の高い人への天然痘ワクチン接種が始まっている。サル痘は何十年も前からアフリカの一部地域で感染が報告されているが、感染拡大を阻止するために天然痘ワクチンが使われたことはない。

サル痘に感染すると発熱、関節や筋肉の痛み、悪寒、疲労感を感じる。重症化すると、顔や手に発疹が現れ、全身に広がることがある。感染した人の大半は数週間で回復し、医療処置は必要ないが、妊婦や高齢者などは重症化リスクが高いと考えられている。

世界保健機関(WHO)は先週、サル痘の緊急事態宣言を見送り、ワクチンを共有する仕組みを構築すると発表した。一部の専門家は豊かな国にワクチンが集まるのではないかと懸念している。

ロンドンに拠点を置く分析会社Airfinityによると、イギリスはババリアン・ノルディック社製の天然痘ワクチンを4500回分保有し、2万回分注文したという。米国は100万回分以上を確保し、1300万回分注文している。

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