マリア・コレスニコワ

9月7日、大統領選挙でアレクサンドル・ルカシェンコ大統領に戦いを挑んだ野党党首のひとり、「マリア・コレスニコワ氏」が覆面をした複数の男たちに拘束、ミニバンに押し込まれた。

コレスニコワ氏と一緒に行動していた同僚は、ウクライナとの国境近くで当局が彼女を無理やり拘束し、誘拐したと述べた。

同僚のアントン・ロデンコフ氏は9月8日首都ミンスクで記者会見を行い、以下のように述べた。

アントン・ロデンコフ氏:
「覆面をした男たちは、コニスニコワ氏をミニバンの後部座席に無理やり押し込んだ」

「コレスニコワ氏はどこにも行かないと叫んだ。拘束後、ミニバンの前方座席にあったパスポートを奪い取り、バラバラに切り裂いて車外に投げ捨てた。当局は彼女をウクライナに追放するつもりだったが、彼女はそれを拒否、どこかに連れ去られてしまった」

ヨーロッパ最後の独裁者との会談を促進する目的で野党によって立ち上げられた調整評議会のメンバーを務めるコレスニコワ氏は、他の野党評議員2名と共に誘拐され、姿を消した。

ベラルーシ国境警備委員会のスポークスマンを務めるアントン・ビコフスキー氏は9月8日に記者会見を行い、コレスニコワ氏が当局の管理下にあることを認めた。しかし、国境付近で起きた事案については言及しなかった。

またビコフスキー氏は、「コレスニコワ氏がウクライナへの不正入国を企てていたため、阻止した」と付け加えた。

ベラルーシ当局は同様の戦術を用いて他の反対勢力も強制的に国外追放し、ルカシェンコ大統領再選に抗議する活動を終わらせようと考えている。

66歳の狂犬独裁者は8月9日の大統領選挙で投票結果を不正に操作。アメリカとEUに「自由も公正もない選挙」と批判を受け、野党との対話に応じるよう要求されたが、その申し出も却下している。

ルカシェンコ大統領に反対する野党党首のひとり、「スヴャトラーナ・ツィハノウスカヤ氏」は、選挙後に当局の圧力を受け、リトアニアに退去せざるを得なかった。

ツィハノウスカヤ氏は9月8日に欧州評議会で演説し、ルカシェンコ大統領および政府高官への国際的な制裁を求めた。

スヴャトラーナ・ツィハノウスカヤ氏:
「私たちはベラルーシを支配し、権力から手を放そうとしない独裁者への国際的な制裁を必要としている」

「ルカシェンコ大統領は国民の票を盗み、選挙結果を不正に操作した。欧州各国はベラルーシ政府との取引を一切断ってほしい。彼はベラルーシのリーダーではない」

今週も首都ミンスクでは抗議活動が続き、少なくとも数十人が逮捕された。ここ数週間、数千人がルカシェンコ大統領の毒牙にかかり、拘束、拷問を受けている。

EUはベラルーシに対し、「不当に拘束した者たちの即時釈放」を要求。野党との対談要求を無視すれば、制裁を課すと述べている。

フルート奏者として活動していたコレスニコワ氏は、ルカシェンコ大統領に挑戦するキャンペーン本部を率いてきた。

しかし、選挙に出馬する予定だったヴィクトル・バルバリコ氏が拘束、投獄。コレスニコワ氏は当局による破壊的な不正を目撃し、最後まで戦うと決意した。

マリア・コレスニコワ氏は無事なのか?

野党を率いる3人の女性

ルカシェンコ大統領に力を合わせて立ち向かった3人の女性のうち、ベラルーシ国内に留まっているのはコレスニコワ氏だけである。

彼女はバルバリコ氏の投獄後、「ヴェロニカ・ツェプカロ氏」とツィハノウスカヤ氏との共闘を決断した。

国連安全保障理事会および欧州評議会で演説したツィハノウスカヤ氏の夫も、当局から大統領選挙への出馬を妨害、投獄されている。

元ベラルーシ大使のツェプカロ氏は、現在、家族とポーランドにいる。

別の女性活動家、オルガ・コヴァルコワ氏によると、「ツェプカロ氏は投獄される可能性があったため、ポーランドに脱出せざるを得なかった」と述べた。

さらに、コヴァルニコワ氏自身もベラルーシ当局に拘束され、ポーランドに移送されたという。

オルガ・コヴァルコワ氏:
「私は当局のエージェントに拘束され、車に押し込まれた。目的地は分からず、殺さるかもしれないと思った」

「エージェントたちはベラルーシとポーランドの国境で私を降ろし、ポーランド行のバスに押し込んだ。国境警備隊も事態を承知しているようだった

大統領選後の最初の数日間。抗議者に対する当局の「暴行と拷問」はエスカレートし、数千人が叩き伏せられた。しかし、これが国際的な怒りを巻き起こし、当局は方針を転換。暴行と拷問ではなく、「脅迫と逮捕」に切り替えた。

ベラルーシの検察官は、野党党首および抗議者たちの権力移行要求により、国家安全保障を大きく損なったと声明を発表。野党調整評議会に対する犯罪捜査を開始したと述べた。

結果、コレスニコワ氏他数人の評議会メンバーは逮捕されたのである。

先週、野党調整評議会に参加した元文化大臣のパベル・ラトゥシコ氏は、当局の脅迫と尋問を受け、ポーランドに逃亡した。

以前、ルカシェンコ大統領はラトゥシコ氏に対し、「赤い線を越えれば起訴される」と脅迫していた。

野党党首、活動家への圧力が強まっているにも関わらず、抗議活動は現在も続いており、先週末には大雨の中、推定10万人が街頭で声を上げた。

西側からの批判を受けたルカシェンコ大統領は、メインスポンサーのロシアにバックアップを求めている。

プーチン大統領は抗議活動が暴力的になった場合、ルカシェンコ大統領の要請に応じ、治安部隊をベラルーシに送り込む用意があると述べ、野党党首および西側に強烈な圧力をかけた

また、ルカシェンコ大統領は抗議を扇動したとしてアメリカを非難。「この横暴を放置すれば、ロシアでも同じような大規模デモが発生し、国はガタガタになるだろう」とクレムリンに警告した。

アレクサンドル・ルカシェンコ大統領:
ベラルーシ崩壊後、アメリカはロシアの破滅を狙うだろう

「大統領選挙に不正などない。私は国民の支持を得た結果、当選した。抗議者たちのクーデターを容認するなどあり得ない」

なお、クレムリンはルカシェンコ政権に固執しておらず、野党との会談および再選挙を行い、国民と世界の怒りを収束させることが上策と考えているようだ。

首都ミンスクに本拠を置くアナリストのヴァレリー・カルバレビッチ氏は以下のように述べた。

ヴァレリー・カルバレビッチ氏:
「ベラルーシ当局のシナリオは明白。クレムリンのバックアップにより全ての野党党首を国外に押し出し、抗議者たちの力を奪えばいい」

「ルカシェンコ大統領は野党党首を追放することで、大規模な抗議集会の終息を狙っている。しかし、不当な圧力を受けた抗議者たちは怒り、抗議活動に拍車をかけている」

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当局による拘束と拷問は現在も続いている

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