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スウォッチ狂騒曲、限定モデル発売で混乱拡大、暴動も

問題となったのは、スウォッチと高級時計ブランド「オーデマピゲ」が共同開発した「ロイヤルポップ」と呼ばれるモデルだ。
2026年5月16日/スイス、ジュネーズ、スウォッチの店舗前(AP通信)

スイスの時計大手「スウォッチ・グループ」が発売した新型モデルをめぐり、世界各地で混乱が広がっている。限定コラボ商品の発売日に店舗前へ購入希望者が殺到し、警察が出動する騒ぎに発展したのである。今回の騒動は希少性をあおって消費者心理を刺激する「ドロップカルチャー」の過熱ぶりを象徴する事例として注目されている。

問題となったのは、スウォッチと高級時計ブランド「オーデマピゲ」が共同開発した「ロイヤルポップ」と呼ばれるモデルだ。1980年代のスウォッチのポップなデザインと、オーデマピゲの代表作「ロイヤルオーク」の意匠を組み合わせた商品で、価格は約400ドルと比較的手ごろだ。通常、オーデマピゲの時計は5万~6万ドル以上するため、「高級ブランドを安価で所有できる」として若者を中心に人気が集中した。

発売当日にはパリ、ロンドン、ミラノ、ニューヨークなどの店舗前に長蛇の列ができた。パリでは群衆整理のため警察が催涙ガスを使用し、ミラノでは購入希望者同士の乱闘が発生した。イギリスでも各地に「群衆」が押し寄せ、一部店舗は営業停止に追い込まれた。報道によると、逮捕者も出ている。SNS上には、人々が押し合いながら店内へ突入する映像が拡散され、騒動は瞬く間に世界中へ広がった。

背景にあるのが、近年拡大している「ドロップカルチャー」だ。これは数量限定の商品を突然発売し、希少性や話題性によって消費意欲を刺激する販売戦略を指す。もともとはストリートファッション業界で広がった手法だが、現在では時計や玩具、食品など幅広い分野へ浸透している。SNSとの相性が良く、「並んででも欲しい」「買えたこと自体がステータスになる」という心理が熱狂を生み出している。

今回の騒動では転売目的の購入者も多かったとみられる。定価400ドル前後の時計が、オンライン市場で数千ドルから1万ドル以上で取引される例も確認された。ニューヨークの宝石街では複数の時計を買い占め、高値で転売する業者も現れたという。こうした転売市場の存在が「今買わなければ損をする」という焦燥感をさらに強めた。

スウォッチ側は「商品は今後数カ月にわたって販売されるため、急ぐ必要はない」と説明し、供給不足に陥ることはないと強調している。しかし、オンライン販売を行わず店舗限定にしたことが混乱を助長したとの批判も出ている。専門家の間では、「企業は話題性を得られる一方、安全対策への責任も負うべきだ」との指摘が強まっている。

今回の騒動は現代の消費文化が「モノを所有する喜び」から、「話題に参加する熱狂」へ変化していることを浮き彫りにした。SNS時代のマーケティングは巨大な宣伝効果を生む半面、一歩間違えれば群衆事故や社会混乱を招く危険性も抱えている。企業が熱狂をどこまで演出し、どこで制御するのかが、今後ますます問われることになりそうだ。

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