◎戦闘は昨年8月のベイルート港爆発事故に関連する抗議デモ中に発生した。
2021年10月14日/レバノン、首都ベイルート南部郊外のダヒエ、キリスト教レバノン軍団の戦闘員(Getty Images/AFP通信)

10月14日、レバノンの首都ベイルートでシーア派イスラム教徒とキリスト教レバノン軍団の戦闘員が衝突し、少なくとも6人が死亡、32人が負傷した。

戦闘は昨年8月のベイルート港爆発事故に関連する抗議デモ中に発生した。

現地メディアによると、保守的なキリスト教レバノン軍団の戦闘員が群衆に向けて発砲し、一部のシーア派がこれに応戦したという。しかし、レバノン軍団は先制攻撃を否定した。

レバノンは過去150年間で世界最悪の経済危機を含む複数の危機で荒廃しており、今回の宗教間抗争は暴力が蔓延するという不安を引き起こした。

昨年の致命的な爆発をめぐる緊張は、通貨の崩壊、絶望的なハイパーインフレ、貧困の急増、長期にわたる停電とエネルギー危機など、レバノンを取り巻く多くの問題が要因になっている。

ヒズボラの指導者ハッサン・ナスララ氏と国の主要な政治家は、爆発事故調査の首席調査官タレク・ビータール判事は政治的な理由で調査を進めていると非難したが、事故に巻き込まれた人々はビータール判事の仕事を支持している。

爆発事故から14カ月経つが、責任を問われた者はひとりもいない。

ベイルート港の倉庫に不適切に保管されていた硝酸アンモニウムは昨年8月4日に爆発し、消防士や子供を含む少なくとも214人が死亡、6,000人以上が負傷し、約30万人が住居を失った。

ナジブ・ミカティ首相は抗争に懸念を表明し、ベイルートの住民に外出を控えるよう呼びかけた。ミシェル・アウン大統領は抗争に関与した者を厳しく非難した。

AFP通信などによると、保守派と見られる数百人がビータール判事の解任を求めて政府本庁舎近くで抗議デモを行い、その中の一部が群衆に向けて発砲したという。

ある目撃者はロイター通信に、「キリスト教レバノン軍団の民兵がビータール判事を支持する別の抗議集団に発砲し、撃ち合いになった」と述べた。子供を含む周辺住民の多くが避難したと伝えられている。

現地メディアによると、抗争は数時間続いたという。

ロイター通信によると、殺害された人々の一部は頭を撃たれていたという。犠牲者の中には自宅で流れ弾に当たり死亡した女性が含まれていた。

ヒズボラは14日の声明で、「キリスト教レバノン軍団は群衆に向け発砲し、民間人を殺害した」と述べた。「ゲリラは通りや屋上に人員を配備し、自動小銃とグレネードランチャーで民間人を狙い撃ちました...」

これに対し、レバノン軍団の指導者サミール・ジャアジャ氏は暴力を非難し、落ち着きを求めた。「私たちは全ての暴力を非難します。いかなる理由があろうと暴力は許されません...」

ミカティ首相はベイルートの住民に外出を控え、暴力や扇動に巻き込まれないよう強く呼びかけた。

軍当局は別の声明で、戦闘に関与した容疑者を捜索するために兵士を配備したと述べ、道路上で銃器を持ち歩く個人は狙撃の対象になると警告した。

一方、ベイルートの裁判所は13日、昨年の爆発事故に関与したとされる元政府高官と現職議員の異議申し立てを却下した。2人はビータール判事の調査は偏見に満ちていると非難した。

爆発事故の遺族は裁判所に異議を申し立てた2人を非難し、その後、事故調査は2度目の中断を余儀なくされた。遺族たちは「政治家は自分の富と地位を守ることしか考えていない」と述べ、抗議デモを継続している。

独立系メディアと権利団体の調査により、政府高官、安全保障当局者、そしてヒズボラはベイルート港に硝酸アンモニウムが不適切に保管されていることを認識していたが、予防策を講じることなく、問題を放置し続けたことが明らかになった。

2020年8月5日/レバノン、首都ベイルート(Getty Images/AFP通信)
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