◎この法案はヒジャブを着用しない女性にサービスを提供する事業主や、それに反対する組織・活動家への処罰を拡大するものであり、組織的な犯行であれば最高10年の懲役刑に処される可能性がある。
2019年6月6日/イラン、首都テヘランの公園(Getty-Images)

イラン議会は20日、公の場でヒジャブ(イスラム教のスカーフ)着用を拒否する女性と、それを支持する人々に重い刑罰を科す法案を承認した。

同国では1年前にヒジャブを正しく着用していないという理由で警察官に暴行を受け死亡したクルド人女性のアミニ(Mahsa Amini)さんを悼む小規模な集会が各地で開かれている。

国営イラン通信(IRNA)によると、この法案はヒジャブを着用しない女性にサービスを提供する事業主や、それに反対する組織・活動家への処罰を拡大するものであり、組織的な犯行であれば最高10年の懲役刑に処される可能性がある。

議会はこの法案を賛成多数で可決。イスラム教聖職者で構成される評議会の承認を得た後、最高指導者ハメネイ(Ali Khamenei)師が施行を許可する予定だ。

アミニさんの死に端を発したデモは全国に拡大。治安部隊の取り締まりにより500人以上が死亡し、2万2000人以上が逮捕された。デモは激しい弾圧を受け、今年初めに沈静化した。

指導部の圧政に反対する多くの女性が今もヒジャブ着用義務を無視している。

政府は今夏、ヒジャブおよびブルカ(全身を覆うイスラム教のヴェール)着用を推進する新たなキャンペーンを開始。それを着用しない女性を見た時は警察に通報するよう呼びかけている。

指導部は公の場でのヒジャブ着用を「聖典コーランに基づくもの」と主張し、西側政府の批判を一蹴。「米国とその属国が抗議デモを推進し、国家転覆を企てている」と非難している。

デモ隊はソーシャルメディアでヒジャブ強制を批判し、さらに権力を独占する聖職者たちの腐敗や統治能力の低さを世界に発信し続けている。

IRNAによると、北部の町で20日午後、銃を持った正体不明の武装集団が聖職者を射殺したという。

IRNAは警察関係者の話しとして、「個人的な争いが殺人に発展した」と伝えているが、一部のSNSユーザーは指導部に反対する勢力が聖職者を攻撃していると主張した。

一連のデモでは聖職者が何度も攻撃を受けている。今年4月にはシーア派の幹部聖職者が何者かに射殺された。

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