米国の「食べ放題」文化衰退、コロナ禍が決定打に
食べ放題文化の起源は、第2次世界大戦後間もない1940年代のラスベガスにさかのぼる。
.jpg)
米国の「食べ放題」文化が大きな転換点を迎えている。戦後の豊かな食料供給を象徴し、長年にわたり米国人の外食文化を支えてきたビュッフェ形式のレストランは、コロナ禍を契機に急速な縮小を余儀なくされている。
食べ放題文化の起源は、第2次世界大戦後間もない1940年代のラスベガスにさかのぼる。当時開業したカジノホテルでは、客が短時間で食事を済ませて再び賭博を楽しめるよう、定額で好きなだけ食べられるビュッフェを導入した。誕生の経緯には複数の説があるものの、この業態は瞬く間に全米へ広がり、「ゴールデン・コラル」などのチェーン店にも採用されるようになった。
背景には、戦後の米国農業の飛躍的な発展があった。品種改良や農業機械の普及、化学肥料の活用によって農産物の生産量が大幅に増加、1948年から2017年までの間に農業生産は約3倍に拡大した。豊富な食料を大量に提供する食べ放題は、「豊かさ」を象徴する米国文化の一つとなり、冷戦期には豊富な食料供給を誇示する存在として、米国の繁栄を象徴する役割も果たした。
しかし、2000年代に入ると状況は変わり始めた。健康志向の高まりやカジュアルレストランの台頭により、ビュッフェの人気は徐々に低下した。さらに2020年、新型コロナウイルスの感染拡大が決定打となった。不特定多数の利用客が同じトングや取り分け用具を使うセルフサービス方式は衛生面への懸念が強まり、多くの店舗が営業停止や閉店に追い込まれた。営業を再開した店舗でも、従業員が料理を取り分ける方式への変更や規模縮小が進んでいる。
一方で、ネバダ州ラスベガスでは食べ放題が完全に姿を消すとの見方は少ない。現在営業を続ける店舗は、高級食材やライブキッチンを取り入れるなど、従来の「安く大量に食べる」スタイルから、「特別な食体験」を提供する高級路線へと転換している。かつて1ドル程度で楽しめたビュッフェは、現在ではロブスターやプライムリブを提供する高価格帯の商品へと変貌を遂げた。
専門家は、食べ放題は単なる飲食形態ではなく、戦後の大量生産・大量消費を象徴する米国文化そのものだったと指摘する。コロナ禍を境に、その象徴は姿を変えつつあり、衛生意識や消費者ニーズの変化に合わせた新たなビュッフェの形が模索されている。
