◎民族主義者のエルドアン氏は今回も非常に分裂的な選挙戦を展開した。
2023年5月15日/トルコ、イスタンブール、エルドアン大統領の看板と歩行者(Emrah Gurel/AP通信)

NATOとロシアも注目するトルコ大統領選は5月28日の決選投票で勝者を決めることとなった。

国営アナトリア通信によると、開票率99.99%時点の得票率は現職のエルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領が49.5%、野党統一候補のクルチダルオール(Kemal Kilicdaroglu、共和人民党)党首が44.8%、第三候補が5.2%。

選挙管理委員会は15日に結果を公表。いずれの候補も当選に必要な50%以上を獲得できなかったため、上位2人の決選投票に移行することが決まった。

民族主義者のエルドアン氏は今回も非常に分裂的な選挙戦を展開した。

エルドアン氏はクルド人政党の支持を得たクルチダルオール氏を「テロリスト」と共謀していると批判。「不適格なLGBTQ+(性的少数者)の権利を擁護している」と嘲笑した。

トルコの保守的なイスラム教徒は差別的なエルドアン氏の考えを支持し、反LGBTを推進している。

エルドアン氏はインフレで大打撃を受けた低中所得者層を取り込むため、政権の成果をしつこくアピール。現政権は賃金や年金を増やし、電気やガス代を補助する一方、国防産業やインフラプロジェクトを拡充することで、国土の強靭化に成功したと主張した。

地元の民間メディアはクルチダルオール氏が優勢と伝えていたが、エルドアン氏は下馬評を覆し、渾身のガッツポーズを決めた。

アナトリア通信によると、エルドアン氏の与党・公正発展党(AKP)は夜遅くまで祝賀会を行ったという。

エルドアン氏は首都アンカラの党本部で演説し、支持者から喝采を浴びた。

一方、政権交代を実現すると誓った野党は世論調査を下回る結果に失望しつつも、「第2戦で絶対勝つ!勝つ!勝つ!」と支持者に呼びかけ、結束を訴えた。

AKP率いる与党連立政権は議会選(定数600)でも過半数を維持した。

エルドアン氏に投票したという女性はAP通信の取材に対し、「彼はうまくやっていると思う」と語った。

クルチダルオール氏に投票した有権者たちはSNSに「信じられない」「最悪」「インフレ王エルドアンに投票したもの好きは誰ですか?」などと書き込んでいる。

クルチダルオール氏は言論の自由やLGBTに対する弾圧を撤回し、高インフレと通貨切り下げによって大打撃を受けた経済を修復すると公約に掲げ、選挙戦を戦った。

また、外交政策においては西側・NATO同盟国との関係を重視し、ウクライナに攻め込んだロシアを厳しく非難した。

エルドアン氏はNATO同盟国を批判し、ロシア寄りの政策を取ることもあったが、真逆の対応を取ることも珍しくなかった。

最新の公式統計によると、同国の消費者物価指数(CPI)は44%。ピーク時の半分近くまで低下したものの、西側の同盟国に比べるとはるかに高い。

保守層は圧倒的に与党を支持し、クルチダルオール氏の野党連合は西部と南部で票を集めたようだ。

欧米諸国・ロシア・外国人投資家はエルドアン氏が経済面で異例のリーダーシップを発揮し、気まぐれながらも一定の成功を収めていることから、結果に強い関心を寄せていた。

クルチダルオール氏の陣営はエルドアン氏の再選を期待するロシアが選挙に介入したと非難している。

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