◎ディアブ首相と3人の元閣僚は先週、ベイルート港の爆発事件につながる様々な問題を放置した罪で起訴された
◎国内の全ての政治派閥はベイルート港から後援の恩恵を受け、港での疑わしい取引を見逃してきた。
政治家とシーア派イスラム原理主義組織ヒズボラは起訴を違憲と非難している
2020年8月10日 ロイター通信/レバノン、首都ベイルート、ハッサン・ディアブ首相

ABCニュースによると、ベイルート港の爆発事件で起訴されたハッサン・ディアブ首相と3人の元閣僚は、事件を担当するファディ・ソーワン裁判官の出頭要請を却下したという。

ディアブ首相と3人の元閣僚は先週、ベイルート港の爆発事件につながる様々な問題を放置した罪で起訴された。

8月4日の爆発の死亡者は200人以上、負傷者は数千人、推定30万人が住居を失いホームレスになったと伝えられている。

爆発の原因は港の倉庫に6年間保管されていた硝酸アンモニウム約2,750トンだった。

ソーワン裁判官はディアブ首相に対し、12月14日に被告として尋問を受けるよう命じていたが、4人は出頭要請を却下した。

ディアブ首相は声明で、「起訴は政治家を標的にした違憲行為である」とソーワン裁判官を非難した。

レバノンの市民はソーワン裁判官による政府高官の起訴を賞賛した。しかし、政治家とシーア派イスラム原理主義組織ヒズボラは起訴を違憲と非難している。なお、非難した者の中には、レバノンのスンニ派イスラム教のトップ、ディアブ首相の政敵であるサード・ハリリ氏も含まれている。

2020年8月5日 ロイター通信/レバノン、首都ベイルート、爆発地点周辺の様子

ディアブ首相を支持する政治連合とヒズボラは、説明責任につながる可能性のある問題を力でねじ伏せてきた。

不処罰の文化は政治の中に浸透し、何十年もの間レバノンを蝕み、結果、広範な腐敗が発生したことで、レバノンを歴史上最悪の経済および金融危機に陥れた。

レバノンのナイザル・サギエ弁護士は4人の出頭拒否について、「宗派の後ろに隠れることで説明責任から逃れようとしている」と語った。

情報筋によると、3人の元閣僚も出頭要請に応じるつもりはないと述べたという。要請無視を却下するためには、議会の免責を削除しなければならない。

ソーワン裁判官は4人が再び要請を却下した場合、どのように対処するかを明確にしていない。

関係者はABCニュースの取材に対し、「逮捕状の発行もあり得るが、それもねじ伏せられれば、ソーワン裁判官は辞任を決意するかもしれない」と述べた。

ディアブ首相は8月10日に辞任したが、ヒズボラを含む関係当局が新しい内閣に合意しなかったため、暫定首相として地位を維持している。

来週予定されているフランスのエマニュエル・マクロン大統領の訪問に先立ち、ジャン=イヴ・ル・ドリアン外相はレバノンを沈没直前のタイタニック号に例えた。

ジャン=イヴ・ル・ドリアン外相:
「この道を歩み続ければ悲惨な結果になる。私にとって、レバノンはオーケストラのないタイタニックだ」

「市民は政治家を完全に否定している。そこにオーケストラはない

2020年8月8日 ロイター通信/レバノン、首都ベイルート、抗議者と警察

ベイルート港で発生した爆発について

・硝酸アンモニウム2,750トンをベイルート港に運び込んだ貨物船は「Rhosus(ローサス号)」。

・ローサス号は1986年に築造された。

・ローサス号の元所有者はロシアの実業家、イゴール・グレシュキン氏。

・2013年7月、モザンピーク共和国に向け航行中だったローサス号は、セビリア港で安全対策の欠陥(計14カ所)を指摘される。積み荷は硝酸アンモニウム2,750トンだった。

・硝酸アンモニウムの供給会社は「Rustavi Azot LLC」。顧客はモザンピーク共和国の国際銀行。当行によると、商業用爆薬を製造する国内の企業に代わり、硝酸アンモニウムを購入したという。

・2014年2月、ローサス号がベイルート港に入港。この時、ローサス号は約100,000ドルの未払い請求を抱えており、ベイルートの港湾当局に「差し押さえられた」。

・2014年6月頃、乗組員たちは、ローサス号の船内に危険物質が積まれていることを港湾当局者や関係者に警告していた。

・2014年9月、ベイルートに足止めされていた船長と乗組員、帰国。

・港湾当局は司法に複数回書簡を送り、硝酸アンモニウムの再輸出または販売の許可を求めていたと主張。しかし、地元メディアの調査報道記者、リヤド・コベス氏は司法に提出した書簡に問題があったと指摘。裁判所は間違いを何度も指摘し、さらなる情報を求めていたという。

・2020年8月4日、爆発発生。

・200人以上が死亡、数千人が負傷、推定30万人が住居を失いホームレスになった。

・国連の調査によると、爆発で住宅約20万戸、その他の建物約4万戸が被害を受け、そのうち3,000戸は立ち入りできないほど深刻なダメージを負ったという。

・2020年11月24日、レバノンの検察当局、シーア派イスラム原理主義組織ヒズボラの要人と伝えられているベイルート港の元税関職員などを起訴

・2020年12月、レバノンの検察当局、ハッサン・ディアブ首相と3人の元閣僚を起訴。

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