◎ベイルート港の倉庫に放置されていた硝酸アンモニウム約2,750トンは2020年8月4日に爆発した。
2020年8月5日/レバノン、首都ベイルート(Getty Images/AFP通信)

レバノンの国営メディアによると、昨年8月にレバノンの首都ベイルートで発生した爆発事故の調査を進めている主任裁判官が、尋問を拒否した元閣僚の逮捕状を発行したという。

ベイルート港の倉庫に放置されていた硝酸アンモニウム約2,750トンは2020年8月4日に爆発した。公式記録によると、爆発により少なくとも214人が死亡し、6,000人以上が負傷し、約30万人が住居を失った。

検察と裁判所はレバノンを牛耳るイスラム過激派組織ヒズボラの圧力に耐えながら調査を進め、今回初めて元閣僚の逮捕状を発行した。政府当局がどのように対応するかは不明。

タレク・ビータール裁判官は16日、尋問を拒否した元公共事業大臣のユセフ・フェニアノス氏の逮捕状を発行した。また、ベイルート港の現在と以前の警備責任者に対する尋問も要求している。

事故発生時に首相を務めていたハッサン・ディアブ前首相は出頭を拒否している。

ビータール裁判官の前任者も元閣僚の起訴に踏み切ろうとしたが、手続きを開始する前に解任され、事故から1年以上経った今でも爆発を引き起こした正確な原因は分かっておらず、責任を問われた者はひとりもいない。ディアブ前首相は事故の責任を取って辞任したが、ヒズボラは新政権の発足を許可せず、今年8月までディアブ氏に暫定首相を務めさせた。

人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチは先月公表したレポートの中で、当時の政府高官は硝酸アンモニウム約2,750トンを港で保管するリスクを認識していたが、何も手を打たなかったと結論付けた。

地元メディアと多くの独立系ジャーナリストも、政府は港に危険物が大量に保管されていることを認識していたが、処理を怠り、誰も責任を取ろうとしないと非難した。

140以上の国際機関などで構成される事故調査グループは15日、「政府は閣僚、議員、治安当局の上級高官に与えられている免責の解除を拒否した」と述べた。現地メディアによると、閣僚らを起訴するためには、議会の承認、つまり議会を牛耳っているヒズボラの承認を得なければならないという。

グループの代表は声明の中で、「指導者たちはビータール裁判官の調査の公平性に疑問を投げかけ、政治的動機で起訴に踏みきろうとしていると主張した」と述べた。「指導者たちは、政治家は処罰されないというレバノンの誤った文化と、説明責任を果たさない元閣僚を保護したいのです...」

一方、ユセフ・フェニアノス元公共事業大臣の法務チームは16日、ビータール裁判官の逮捕状を却下した。

ヒズボラの支配下に置かれているレバノンの政治は、2019年に勃発した壊滅的な金融危機以来機能不全に陥っている。政府の怠慢が引き起こしたハイパーインフレは国民の預金を紙屑に変え、中東のパリと呼ばれたベイルートは荒れ地になった。

2021年8月4日/レバノン、首都ベイルート、ベイルート港の爆発事故で亡くなった人々を追悼する式典(Hussein Malla/AP通信)

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