◎ヨーロッパの指導者たちタリバンに対する影響力をほとんど持っておらず、北大西洋条約機構(NATO)の同盟国であるアメリカの撤退決定を批判することに消極的だった。
2021年8月16日/アフガニスタン、首都カブールの国際空港、米空軍のC-17輸送機と併走する人々(AP通信/ABCニュース)

8月16日、ヨーロッパの指導者たちは米国主導のアフガニスタン再建計画が呆気なく崩壊したことに失望し、政権を奪取したタリバンに統一された国際的なアプローチを取るよう求めた。

イギリスのボリス・ジョンソン首相は16日にフランスのエマニュエル・マクロン大統領と会談し、タリバン政府に対する認識を共有した。またジョンソン首相は、数日中にG7首脳会談を主催すると明らかにした。

マクロン大統領は「あらゆる形態のテロとの戦いは終わらないだろう」と述べたうえで、タリバンに対し、「かつてのテロ国家に戻ることは許されない」と警告した。また、国連安全保障理事会は協調して対アフガン政策に取り組むと強調し、「ロシア、アメリカ、ヨーロッパは協力できるあらゆることをする」と述べた。

ドイツのアンゲラ・メルケル首相の報道官も英仏の感情に同意し、「タリバンとの会話が可能かどうかは国際的に議論される必要がある」と述べ、民主的な政府を構築することが重要だと強調した。

ヨーロッパの指導者たちタリバンに対する影響力をほとんど持っておらず、北大西洋条約機構(NATO)の同盟国であるアメリカの撤退決定を批判することに消極的だった。

NATOのイェンス・ストルテンバーグ事務局長は先週、「タリバンは政権を無理矢理奪取した場合、国際社会に認められないことを理解しなければならない」と指摘した。

EUの外交政策責任者であるジョセップ・ボレル氏はさらに一歩踏み込み、「政権を力づくで奪取すればタリバンは孤立し、国際的な援助も受けられなくなるだろう」と警告した。

ボレル外務・安全保障政策上級代表はEU外相緊急会議の議長を務める予定。NATO特使も会談を行う予定と伝えられている。

ロシアのアフガン特使は、「クレムリンが新しいアフガン政府を承認するかどうかはタリバンの行動に基づいて決める」と述べた。

一方、NATOの元米国大使であるカート・フォルカー氏は、タリバンに援助の停止をちらつかせ脅迫する手法は避けるべきと警告した。「モダニズムと国際社会を拒絶することはタリバンのイデオロギーの一部であり、アメリカを打ち負かしたことで得られる評判は援助よりはるかに価値があります」

フォルカー氏は欧州政策分析センターが公開した報告書の中で、「タリバンは孤独を感じるしれないが、アメリカはタリバンよりはるかに厳しい状況にあり、より強く孤独を感じるだろう」と述べた。

他のヨーロッパの高官はアメリカをなじった。

フランスのフロランス・パルリ国防相は16日の記者会見でアフガンの崩壊と人道的危機の責任を感じるかと質問され、「フランスは2014年以来アフガニスタンにいなかった」と突っぱねた。

イタリアの極右指導者ジョルジャ・メローニ下院議員は、「皮肉なオバマ・(ヒラリー)クリントン・バイデンの教義を歓迎しましょう」と嘲笑した。「いいですか。勝てないなら、混乱を引き起こしなさい...」

アメリカ、イギリス、その他の西側諸国はタリバンの政権奪取に困惑し、大使館職員、関係者、市民、アフガニスタン人を避難させるためにスクランブルをかけた。一部の米共和党員は今回のドタバタ撤退作戦を却下し、「ベトナム敗走を思い起こさせる恥ずべき事態」と非難した。

ドイツのハイコ・マース外相は16日、「政府、諜報機関、国際社会、私たち全員が状況を理解できていなかった」と認めた。「アフガン軍の降伏スピードを予見できた人はいませんでした...」

イギリスのベン・ウォレス国防相はアフガニスタンに取り残された人々を深く遺憾に思うと述べ、涙を浮かべた。「それはとても悲しいことです。西側諸国は彼らを置き去りにしました...」

ソーシャルメディアにはジョー・バイデン大統領の決定を非難する投稿が相次いで寄せられたが、「イスラム法にこだわるアフガニスタンにこれ以上関わるべきではない」という意見も目立った。

あるSNSユーザーは、「民主主義を否定し、女性を否定し、国際社会の支援に頼っているアフガンとはサヨナラしなければならない」と投稿し、多くの支持を集めていた。「アフガン軍は1兆ドル近い支援を受けたにもかからずあっという間に降伏し、大統領はお金を持って国外に逃亡しました。こんなバカな国に関わったのが間違いです。貿易、取引、援助、全て停止しなさい...」

2021年8月16日/アフガニスタン、首都カブール、タリバンの戦闘員(Getty Images/AFP通信)

アフガニスタン戦争の基本情報

・1996年~2001年、タリバンは国内の全ての女性にブルカ(目の部分だけを開けるイスラム教のヴェール)の着用を強制し、女性の教育を10歳未満に限定し、即決処刑を含む残忍な刑罰を推進した。

・アメリカ主導の連合軍は2001年10月にアルカイダやタリバンを含むジハード組織を追放した。その中には9.11同時多発テロの首謀者であるウサーマ・ビン・ラーディンも含まれていた。

・アメリカはアフガニスタン政府と軍に800億ドル(約9兆円)以上投資し、武器と兵力の強化を支援した。

・2020年2月、アメリカのドナルド・トランプ前大統領はタリバンとの歴史的な和平合意に達した。

・タリバンはアメリカとの取引の中でアフガニスタン政府と和平に向けた協議を推進すると約束したが、交渉は破綻した。

・タリバンやイスラム国(ISIS)を含むジハード組織は連合軍への攻撃を再開し、戦争は20年たった今も続いている。

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