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米国のスモッグ濃度、山火事多発で増加に転じる、大気環境改善の成果消失

米国では2003年から2015年にかけて、発電所や自動車、ディーゼルエンジンに対する厳しい環境規制が導入された結果、スモッグ濃度は約11%低下した。
2026年5月19日/米カリフォルニア州シミバレーの山火事発生箇所(AP通信)

米国で長年続いてきた大気汚染改善の流れが、大規模化する山火事の煙によって逆転しつつあることが分かった。米アイオワ大学などの研究チームが科学誌「サイエンス」で発表した研究によると、2015年以降、山火事由来の煙が地表付近のオゾン濃度を押し上げ、全米のスモッグ(光化学スモッグ)の増加につながっているという。

米国では2003年から2015年にかけて、発電所や自動車、ディーゼルエンジンに対する厳しい環境規制が導入された結果、スモッグ濃度は約11%低下した。しかし、その後は西部を中心に山火事の規模や発生頻度が増加。研究では、2015年以降に全米平均の地表オゾン濃度が約4%上昇したと推計された。現在の傾向が続けば、約20年後にはスモッグ水準が2003年当時まで戻る可能性があるとしている。

研究チームは環境保護局(EPA)の観測網だけでは把握しきれない地域の状況を分析するため、人工知能(AI)を活用。衛星観測データや気象情報、大気汚染データを組み合わせ、全米の高精度なオゾン分布図を作成した。その結果、従来は改善傾向にあった多くの地域でオゾン濃度の上昇が確認された。

山火事の煙そのものにオゾンは含まれていないが、一酸化炭素や揮発性有機化合物などの前駆物質が大量に放出される。これらが太陽光と反応することでオゾンが生成され、広範囲にスモッグを発生させる。特に近年はカナダでも大規模な森林火災が相次ぎ、その煙が国境を越えて米国各地の大気環境に影響を及ぼしている。2022~24年には約4300万人の米国人がEPAの安全基準を超えるオゾン濃度にさらされたという。

研究では健康被害についても分析し、オゾン濃度の上昇により年間318人程度の追加死亡が発生している可能性が示された。オゾンは喘息発作や呼吸器疾患の悪化を招くほか、入院や死亡リスクを高めることが知られている。専門家は気候変動による山火事の深刻化が大気環境改善の成果を打ち消しているとして、温室効果ガス排出削減と森林火災対策の強化が急務だと指摘している。

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